SSブログ

千歳空港 VOR DME No.2 Rwy19L [航空関係]

昨日の日本列島は冬型の気圧配置がゆるみ、目的地である千歳空港も晴天で、この時期としては珍しい南風となってました。
着陸のために使われていた進入方式は VOR DME No.2 Rwy19L。

この進入方式で使われる千歳 VOR は、新空港になる前は民間機も使っていました自衛隊の滑走路、18L/01R 用に設置された VOR でしたので、新滑走路19L への進入方式として使う場合、どう してもオフセット、ズレが生じてしまいます。直線的な進入が設定できない訳ですね。
着陸機は下の図の赤い線に沿って、図の上の方から下へ向かって進入して行き、VDP 付近まで進入しても滑走路を視認できなければ、進入復行を行う事になります。

この進入方式、天気がよい時はそれほど難しい着陸とはなりません。
かなり手前から滑走路が視認できますので、図の青い線のように進入コースから早めに外れて滑走路へと正対し、直線的な進入を行う事ができるからです。ところが天気が悪くなってきますと、かなり手強い着陸となってしまう場合があるのです。

rjccvor19l2.jpg
視程が3キロを下回るようになってくれば、ILS19Rの進入方式となるのでしょうが、「それ程は悪くない」 と言う時が要注意で、昨日が正にそんな時でした。
気象通報を見る限り全く問題はなさそうでした。視程は10キロ以上ありましたし、千フィート辺りにまばらな雲があるだけ。何の躊躇もなく、VOR DME No.2 Rwy19Lを VNAV アプローチで行う事にしたのです。進入復行高度は720フィートに設定されています。

進入開始点 MAOIE を通過しましたが、空港付近はモヤがかかったようになっていて、非常に視界が悪い状態でした。我々がアプローチを行っている時、ちょうど弱い雪雲が空港上空を通過していたのです。

この進入方式で注意しなければならない点は、最初に見えてくる滑走路は自衛隊の18Lだと言う事です。パイロットは『滑走路はどこだ?早く見えてくれないか』 との期待を持って前方を注視していますので、目に飛び込んできた滑走路を自分たちが着陸する滑走路だと信じてしまうんですね。
よくありませんか?エレベータに乗って5階のボタンを押す。エレベータが動き出し、そして止まった階を5階だと信じて降りてしまう。でもそこは4階で、これからエレベータに乗ろうとする人が待っていた。なんて事が。世の中、自分が期待した通りに動いている訳ではないんですよね。
慣れない外航機が間違えて18Lへ進入し、管制官に指摘されて慌ててゴー・アラウンドした。そんな事もありました。

昨日も18Lが先にボンヤリと見えてきました。でも方向が全然違いますので、だまされませんよ!
その時、我々の数分前を飛んでいて、19Lに着陸したエアバス機が叫びました。「滑走路が見えたのはジャスト・ミニマム!ILS19Rをリコメンドします」
小型のエアバス機でも厳しい着陸だったと言う事は、大型の-400では・・・・・進入復行もあり得るかもしれませんので、心の準備だけはしておきましょう。

「アプローチング・ミニマム」 進入復行高度の100フィート手前です。滑走路らしきものがボンヤリと見えてきましたが、まだ確信が持てません。
「ミニマム!」 見えていたのは間違いなく滑走路19Lでした。「ランディング」

上の図だけを見ますと、それ程 難しい操縦操作ではないように思われるかもしれませんが、視程が悪い中、滑走路へと向け、230トンの巨体を時速280キロでひねり込んで行く訳ですから、実際には非常に高い操縦技量を必要とするのです。
滑走路へ機体を正確に正対させる事も大事ですが、注意しなければならないのは降下のパスを正しくキープする事です。滑走路はボンヤリとしか見えませんし、PAPI(Precision Approach Path Indicator : 精密進入角指示灯)のライトも全く見えませんので、進入のパスが乱れやすいのです。
この時 大事なのは、やはりピッチ(飛行機の姿勢)のキープですね。外を見ながらも、PFD のピッチを3度に保ち続ける必要があるのです。素早いクロスチェックが求められますね。

着陸できると言う自信は持っていましたが、我ながら納得のいく進入・着陸となりました。
私は天気のよい日でも、図にあります青い線のコースは飛ばず、VDP の先まで赤の進入コースを維持するようにしていましたので、その経験がやっと生かされた事になります。

今回 行いましたアプローチは VOR DME と VNAV アプローチの組み合わせでしたが、VOR DME アプローチを単独で行う場合のプロファイルは、下の図の青線のように、2000ft→900ft→620ftと階段状に降下して行く事になりますので、操作がやや煩雑となってしまいます。
千歳 VOR からの距離によって、降下できる高度が決まってくる訳ですね。
rjccvor19l4.jpg
進入開始点、MAOIE まで2000ftで水平飛行を行い、そこから降下を開始して、千歳 VOR からの距離9.0マイルまでは900ftを保ちます。千歳 VOR からの距離9.0マイルを DME の計器で確認しましたら、最終降下高度の620ftまで降下して、その後 進入復行点である DME 5.5マイルまで進みます。
そこで滑走路が視認できなければ進入復行を行う事になります。

一方、私好みの VOR DME +VNAV アプローチでは、FMS の VNAV 機能を利用して、ILS アプローチと同じように一定の降下経路(黄線)に沿って進入して行く事ができますので、安定したアプローチが可能になるのです。

コメント(4) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 4

ハルハル

こんばんわ、いつも楽しく拝見しています。

素人質問ですみません、ILSというのは左右?と高度が電波で計器に示されるので、滑走路に向かって正確に降下できることはわかるんですが、このVORでのアプローチというのは、今回のように視程が悪い場合、どうやって降下のタイミングをはかるんですか?
「3度のピッチ」と言えども、適切なタイミングから開始するはずなので何か目安があるはずだと思うんです。たとえばVORまでの距離を見ながらとか、管制官が指示を出すとか。
天候の悪い時に飛行機に乗る度、神業(笑)のように降りていくのが、いつも不思議に思っています。


by ハルハル (2008-03-01 18:40) 

tappy

はじめまして。tappyです。

-400の巨体を、視程の悪い中、あの赤い線から滑走路に向かってひねり込んでいくなんて、記事を読み想像しならがドキドキしちゃいました。
日々の積み重ねって大事なんですね。

by tappy (2008-03-01 21:38) 

ハルハル

ブログへの追記、ありがとうございます、とてもよくわかりました。

徹底した訓練を受けられているとはいえ、300km近い速度のなかで、さまざまな情報を集めて、瞬時に的確な判断を求められる大変なお仕事だなと感じます。
あ、上空はもっと速いんですね・・・
by ハルハル (2008-03-02 08:17) 

HondaJet

パイロット達に(所帯持ちではない)、
目は命の次に大切な物。

“ついうっかり” って言い訳は無い、
そんな厳しい世界なんですね。

by HondaJet (2008-03-02 20:21) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。