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沈まぬ太陽 [映画]

を観てきました。
そして最初に頭に浮かんだ事は、『間の悪い時に、間の悪い映画が封切られたものだ』 との思いに駆られた関係者が結構いたのでは。と言う事でした。

ところで、恩地の生き方はどうなのでしょう?「あそこまではできないが、あの生き方には共感できる」 と思った方もいた一方で、「あいつは馬鹿だ」 と、否定的な意見の方も多かったのでは?
では、行天の生き方はどうなのでしょう?多分、行天支持派の人でも、「俺は行天の生き方は支持するが、俺は行天とはちょっと違う」 と思ったのではないかな?でもそれは多分、自己弁護だよね。
行天のような人間はゴマンと居ます。仲間を踏み台にし、会社の金で食い散らかし、階段を上っていった人達を嫌と言うほど見てきましたからね。

本題の映画の出来栄えですが、久しぶりの力作だと思いました。原作者である山崎豊子さんの力量が大きかった事は言うまでもないでしょうが。
ただ、時制軸(と言うのかな?)がコロコロ変わる映画は苦手ですね。この手法、映画に深み?を与えるのでしょうが、あまりやり過ぎますと、私などには話の前後関係が分からなくなってしまうんですよね。
「事故の責任をとって、辞任すると」 と言っていた社長。社長は神山 繁で、あんたは専務だったのでは?と思ったのですが、時制が変わっていて、社長はとっくに交代していたんですね。

この映画、航空会社の協力は得られなかったでしょうから、実物の飛行機は使えず、全てCGで処理されていたようですが、飛行機が離陸してくる方向と、建物の位置関係。建物と飛行機の大きさの関係がちょっと変でしたよ。
元旦の一番機、滑走路からではなくランプ・エリアから離陸したようにも見えましたし、離陸していく速度も速すぎますよ。大型機のB747ですから、もっとゆったりと見えるはずですが、あれでは離陸速度300ノットでしたね。
ただ、ハッピー・フライトのように飛行機を主題とした映画ではなかったので、それはそれでよかったのかもしれませんね。確かに迫力はありましたから。
でもね、自衛隊のヘリにJAナンバーが付いていたのは、さすがに変だと思いましたよ。自衛隊の協力も得られなかったのかな?

blogjsdarmyhelicopter.jpg

話が出たついでにハッピー・フライトの事。先日WOWOWで観たのですが、合成シーンがよくできたいました。離陸のシーンをコックピットから見たところなど本物みたいでしたからね。ただ、空港が羽田になったり、関空になったりでしたので、知っている人が見れば突っ込みどころだったでしょう。

疑問に思ったところも何カ所か。この手の映画でその事を言っていたら、キリがないでしょうが。
ピトー・ヒーターが不作動でMELが適用できるのか調べてみたのですが、4個のうちの1個が不作動の場合は適用できますね。
ただし、雲一つない日本晴れとの条件が付きますので、距離の短い国内線ならともかく、ホノルルまで飛んでいく間に雲に遭遇しないなど考えられませんので、MEL適用を承認したキャプテンの判断ミスで羽田へのリターンを余儀なくされたと言う事になるでしょう。
離陸後、「雲にに入るなと言ったろ!」 などと怒っていましたが、IFRで飛んでいるのですから、そりゃ無理な相談と言うものですよ。自分の判断ミスを人のせいにするなって。

巡航中に表示されたEICASメッセージへの対応では、「このスイッチをライトにして」 などと勝手にやっておりましたが、ここではノン・ノーマル・チェックリストに従って確実に操作していくべきです。
それに台風が通過中の羽田へ戻ってくるなど、通常では考えられません。
blogturncup.gif
羽田へ引き返すための旋回中、コップの水が右のコップのように傾いていたのはおかしいですね。
調和の取れた旋回をしていれば、左のコップのように機体に対して水平になりますので。

映画を面白く見せる事と、事実通り忠実に描く事は、相反する事でしょうから、なかなか難しい所であろうと言う事はよく分かるのですが。


この映画の中で一番気に入ったのは、GH(と今では呼ばないかな?)の本音が出ていた台詞、

「ドアを閉めて、さっさと行って~」

「もどって来るなよ~」

山崎さんの小説はどれも素晴らしい!ただ、最新作の 『運命の人』 は、事件の詳細がある程度分かっていましたし、ドロドロした男女関係が大きなウエイトを占めていたからか、小説の世界にすんなりとは入り込めませんでしたね。
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yasaisalad

FDキャプテン、こんばんは。

「ハッピーフライト」のお話、パイロットの方から見たらどう見えるのかーということ前々からとっても気になっておりましたので、とても興味深く拝読いたしました。

お正月に封切られたときには、「V1」「VR」「V2」も実は聞き取れていなかったのですが、その後、少し勉強した結果(?)、結構、映画の中のコックピットの会話は本物とは違う?のかなーと思っておりましたが、やっぱりそうでしたか。。。

おっしゃる通り、台風接近の羽田に引き返すーなんて、映画を盛り上げるためにという理由でしか考えられませんね。(ホノルルに行ってしまった方が安全?)

ただ、そういう細部の???は除いても、あの映画は「社会科見学映画」としては非常に見ごたえがあるかと思いました。飛行機が一機飛ぶのにどれだけ多くの人が関わっているか、かつ、一つの出来事がどんどん連鎖していいくということ(バードさんが愛鳥団体の人と話をしていたために飛行機にまとわりついていたかもめを追い払うことができず、それが原因でピトー管がやられて、最後には飛行機は引き返すということになってしまう、、、という連鎖など)は、リアリティがあるかと思いました。

GHさんの会話はあちらこちらで笑わせてくれました。(トイレの中での説得場面は爆笑しました)

FDキャプテンの一番のお気に入りシーンを教えていただいて、さらにそのシーンを見るのが楽しくなりそうです(実は、DVDで結構繰り返し見ては爆笑していますゆえ、、、)。

「沈まぬ太陽」はいよいよ今週見に行ってまいりますー。
by yasaisalad (2009-11-08 23:15) 

野菜さらだ

FDキャプテン、こんにちは。

「沈まぬ太陽」観てまいりました。自身のブログに感想はアップしました。現役キャプテンのコメントーとしてFDキャプテンのブログをご紹介させていただきました(事後報告、申し訳ありません)。

確かに、離陸の速度は素人の私が見ても「速すぎない?」と感じました。

行天のような人、たくさん実在するんですか、、、。私はそういう業界とは本当に縁が余りないので、びっくりするばかりですけれども。

本当に心豊かに過ごすことは大事にしたいと思っています。
by 野菜さらだ (2009-11-12 10:14) 

FD

ブログの紹介、ありがとうございます。

ハッピー・フライト。来週また放映されますので、今度は録画したいと思ってます。
by FD (2009-11-12 16:49) 

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