SSブログ

オート・パイロット [航空関係]

オート・パイロットは両刃の剣。安全運航をこれほど手助けする機器は他にないでしょうし、使い方を誤りますと、飛行機を危険な状態に陥れてしまう恐れもあるのです。
だからと言って、オート・パイロットを毛嫌いしてはいけません。正しい使用法を学ばせるべきなのです。

また、何かあったら直ぐにオート・パイロットを外してしまうと言う風潮も頂けません。
以前にも、ゴーアラウンド・モードを解除する方法として、「オート・パイロットを外して両方のFDをオフとする手順を強調するのはよろしくない」 と書きましたが、ワーク・ロード軽減のためにも、オート・パイロットは正しく使い続けるべきなのです。そして、オート・パイロットをエンゲージする時の注意事項を並べるだけではなく、外す場合の注意点も強調すべきなのです。
状況が呑み込めないまま、慌ててオート・パイロットを外してしまうのは禁物ですよ。

今日の新聞報道を見て、約25年前に発生した身の毛もよだつようなインシデントを思い出しました。
FL410で巡航していたB747SPの4番エンジンが停止したのですが、何の対応もせずにFL410で巡航を続けたため、オート・パイロットはエルロンを左に取って、右に傾こうとする機体を必死?に支えていました。

blogcontrolwheelleft.gif

オート・パイロットは基本的にラダーをコントロールしません。

その後、パイロットが不用意にオート・パイロットを外したため、左に取っていたエルロンが一気に中立へと戻ってしまい、機体は右へと大きく傾いて、ついには背面状態にまでなってしまったのです。
この場合、エルロンが戻ってしまわないように、しっかりとコントロール・ホイールを支えた上で、オート・パイロットを外すか、ラダー・トリムをしっかりと取った後に外すべきだったのです。
B747SPの機体が安定したのは、9500フィートでした。何と!3万フィート以上も操縦不能の状態が続いたのでした。
この事例では、左右のエンジン推力の差と、エルロンが喧嘩した訳ですが、今回の事例では、ラダーとエルロンが喧嘩したのかもしれません。

blogdoorswruddertrim.jpg
-400の場合、コックピットドア・アンロックスイッチ()とラダートリム・スイッチ()の形状は大きく異なっていますし、位置も離れていますので、間違う事はないのですが。

nice!(3)  コメント(7)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 3

コメント 7

トメ

FDさん、こんにちは。

びっくりするニュースでしたね。
コックピットの外で不意の急激な揺れ、急降下を体験した機長さんは、さぞかしびっくりしたことでしょう。映画(ハッピー〇〇〇〇)のワンシーンのようです。
今回のケースでは勝手にオートパイロットが外れたのでしょうか?
(映画では勝手に外れた設定になっていましたが、実際、そのようなことが起こるものなのでしょうか?)
APが働いていれば、急降下は避けられたように思いますが…
いずれ、原因が明らかになることでしょうが。

CAさんが怪我をなさったそうですが、人命に関わる事故にならずに本当に良かったです。
エンルート上でのこと。周囲に関連する機体が無かったことも幸いでしたね!
by トメ (2011-09-09 12:37) 

FD

『安全性の向上のために、Autopilot の使用が推奨される』
と言う事では、会社のポリシーは不変なのですが、
現場の人間の中に、精神主義と言いますか、それを嫌う傾向にあるのが
現実なのです。

航空機事故は、一つのミスだけでは起こらないのが普通です。
ミスが重なった時、はじめて重大な事態に陥るのです。
今回の場合、
① 二つのスイッチの操作を間違えてしまった。
② 操縦桿が大きく傾いた事に驚いて、オート・パイロットを外してしまった。
と言う事になるのではないでしょうか。

by FD (2011-09-09 20:21) 

クロネコ

自分もトラックの運転ではオートクルーズをできるだけ使いワークロードを減らし、その分、後続車や合流車などへの安全確認をしています。

が、会社や先輩方にはオートクルーズを道楽者が使う装置と言う人もいます。

確かに事故もあるかもしれませんが、車の流れや燃費の面でも必ずしも悪しき装置ではないと思います。
by クロネコ (2011-09-10 22:21) 

toshi

初めまして。
"一つのミスだけでは起こらない"ということは良く分かるのですが、今回なぜ737NGのコックピットドアスイッチとラダートリムがほぼ隣同士、かつどちらも回転するノブだったのでしょう。

航空機のコックピットは狭いところに多数の計器、スイッチが並んでいるのは承知していますが、運航に関する重要な指令を出すスイッチと、ファシリティを管理するスイッチがほぼ隣同士に並んでいるというのは当たり前のことなのでしょうか。Failsafeを重要視する航空機のスイッチレイアウトとはちょっと考えられないなと思いました。

これで737NGや他のBoeingの機材のコックピットドアのスイッチレイアウトが改良されるとは思われませんが、はなからそこになければ起きなかった事態だろうとも思いました。
by toshi (2011-09-19 23:32) 

キネマ航空CEO

はじめまして、
エールジャポンのリンクを介して拝読いたしております。

わたくしはKINEMA AIRLINESと称する「飛行機の出てくる映画」を扱ったホームページを運用しております。
その008便で機内上映しております「エアポート ’75」のなかにて、このコラムと関連した事例を扱っております。
差し支えなければリンクを張らせていただければ幸いです。

またFD様ご自身も映画に深いご造詣がおありと拝察いたします。
「早とちりと思い込み」で運行するキネマ航空のご指導もいただければ幸いです。
by キネマ航空CEO (2012-05-15 21:38) 

FD

私も以前乗っていましたアコードにはオートクルーズが付いていましたので、
重宝していたのですが、今の車にはあまり採用されていないようですね。
確かに便利なのですが、居眠り運転の危険があるとの危惧があるのかも
しれません。


色々なスイッチが並んでいると言う事に関しましては、ペデスタルだけではなく
モードコントロールパネル(MCP)でも同じ事が言えるのですが、微妙に形状
変えてあって、誤作動の可能性を極力避けた設計にはなっているのですが、
残念ながら人間のミスを完全に防ぐことは不可能です。
ボーイングはまだマシなのですが、YS-11は人間工学的には最悪でした。


KINEMA AIRLINES拝見しました。
リンクの件了解しました。宜しくお願いします。

by FD (2012-05-17 22:31) 

Cialis 5mg

沒有醫生的處方
cialis efficacit http://cialisyoues.com/ Cialis coupon
by Cialis 5mg (2018-04-14 06:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1