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航空管制解説 [航空管制解説]

エアバンドで航空管制を聞く事を趣味としている方がいらっしゃいますが、電波が弱かったり、早口だったりして何を言っているのか分からない。と言う場合も多い事でしょう。また、管制方式が分からないため、言っている意味が理解できない。と言う場合もあるでしょう。
と言う事で、管制方式とそれに使われる管制用語の解説をしてみようと思い立ちました。管制方式を理解していれば、聞き取りも楽になるでしょうから。

飛行場管制所ではなく、主としてレーダー管制下(ターミナル管制所・航空路管制所)における管制方式と管制用語について解説しますが、主として IFR で飛行する定期航空便に対する管制方式について説明いたします。

★ 出発機

レーダー管制を始めるためには、まず離陸した航空機に対してレーダー識別を行わなければなりませんが、その方法としましては、
① 出発機のターゲットを離陸滑走路の末端から1マイル以内で捕捉する。
② トランスポンダーの識別(IDENT)機能を作動させ、識別信号の表示を確認する。
③ ARTS 又は RDP を使用してレーダー識別を行う場合は、データブロックが当該機である事を確認する。


離陸後、パイロットは承認高度と通過高度を 100 フィート単位で通報する。となっておりますので、

PILOT:Tokyo Departure ECO 675 Climing to FL210 Leaving 12,000 .
CONTROLLER : ECO 675 Radar Contact .

ここで言う承認高度とは、管制承認発出時に指示された高度の事ですので、例えば
PLUTO RNAV デパーチャーにおける守谷 VOR の制限高度、13,000 フィートを通報するのは間違いと言う事になります。

ここで注意しなければならないのは、上記のような交信だけでしたら、守谷 VOR まで 13,000 フィートを保った後、承認高度である FL210 まで上昇する事ができるのですが、

C : ECO 675 Radar Contact,Climb and Maintain 13,000 或いは、
C : ECO 675 Radar Contact ,Fly Heading 080 Radar Vector to MORIYA ,
あaaClimb and Maintain 13,000 .

との指示があった場合には、13,000 フィートが新たな承認高度となり、守谷 VOR を通過したからと言って、FL210 まで上昇する事はできませんので、新たな管制指示を待つ必要があります。

“ Radar Contact ” の用語を使って、レーダー管制(レーダー業務 : Radar Service)が始まった事を通報されましたが、いつ終わるのでしょうか?
① 計器進入方式により着陸した場合。
② 計器進入を許可し、飛行場管制所(タワー)が視認した場合。
③ ビジュアル・アプローチを許可し、飛行場管制所と通信するよう指示した場合。
となっております。
日本の上空は全て管制用レーダー網によってカバーされておりますので、レーダー管制は目的地飛行場に着陸するまで続く事になります。途中で担当する管制機関が替わっても、あらためてレーダー識別を行う必要はない訳です。

離陸上昇中、降下中の高度制限に関する管制方式が近年大きく改正され、欧米方式に統一されました。

例えば、羽田から沖縄や南九州へ向かう飛行機に使用される NANAM RNAV デパーチャーには、浦賀ポイント 13,000 フィート以下、オーシャン・ポイント FL150 以上、焼津 NDB /承認高度等の高度制限がありますが、上昇中に、

C : ECO 675 Climb and Maintain FL380 .

との管制指示が発出され、あらたな高度制限が指示されなかった場合には、全ての高度制限が無効となります。高度制限が引き続き適用される場合には、

C : ECO 675 Climb and Maintain FL380 ,Comply with Restriction.

と指示されますが、例えば浦賀ポイントの高度制限のみ無効とし、他は有効とするような場合には、

C : ECO 675 URAGA Restriction Canceled ,Rest of Restriction Unchanged.

と指示されます。
ポイントへ直行させたい場合には、

C : ECO 675 Recleared Direct URAGA .

と指示されますが、経路が変更されていますので、この場合もあらたな高度制限が指示されない限り、全ての高度制限は無効となります。
高度制限に変更がない場合は、

C : ECO 675 Recleared Direct URAGA , Comply with Restriction.

と指示されます。ただし、

C : ECO 675 Recleared Via URAGA Direct YAIZU .

との指示があった場合には、通過しないオーシャン・ポイントと焼津 NDB の高度制限は無効となりますが、浦賀ポイントまでは経路が変更されていませんので、浦賀の高度制限は有効となります。
ただし、

C : ECO 675 Recleared Via URAGA Direct YAIZU ,(Climb and )Maintain FL380 .

と、あらためて高度が指示された場合には全ての高度制限が無効となります。

以前の日本の管制はまったく逆でして、高度制限について何も言われなかったら全て有効、無効とする場合のみ “ Cancel Restriction ” と言っていたのです。

★ レーダー交通情報

C : ECO 675 Traffic 10 O’clock 20 Miles Westbound Boeing 747 FL400 .
C : ECO 675 Traffic 11 O’clock 10 Miles Parallele Opposite (Same)Direction FL370 .
C : ECO 675 Traffic 2 O’clock 5 Miles Crossing Right to Left , Altitude Readout 16500 .
C : ECO 675 Traffic 11 O’clock 20 Miles Eastbound, Converging (Diverging) FL390 .
C : ECO 675 Traffic 12 O’clock 7 Miles Slow(Fast) Moving, Altitude Unknown.

レーダー識別を行い、管制下にある航空機の高度は、FL400 のように確定的に通報されますが、管制下にないために、レーダー識別が行われていない航空機の高度情報は、「レーダー・スクリーン上では1万6千5百フィートと表示されている」 と通報されるだけです。

トラフィックが解消したら、

C : ECO 675 Clear of Traffic.米軍管制下では、Traffic Nolonger Factor)

降下の指示は、

C : ECO 675 Descend and Maintain FL160 .

と指示されますが、『管制指示はパイロットが受領した後、ただちに遵守されるものとして発出される』 との一文がありますので、ただちに降下を開始する必要があります。
降下の開始時期がパイロットの判断に任せられる場合は、

C : ECO 675 Descend at Pilots Discretion, Maintain FL160 .

となります。
また、『降下に係わる高度を指定する場合であって、特定フィックスの通過高度が含まれる時は、降下の時期についてはパイロットに任される』 となってますので、

C : ECO 675 Descend to Reach FL160 by SPENS.

との指示があった場合には、降下の時期がパイロットに任される事になります。

東北、北海道方面から羽田へアプローチする場合、東京コントロールから次のような降下指示が発出されます。

C : ECO 675 Descend to Reach 13,000 by AMI Altimeter 2995 .

その後、東京アプローチから更なる降下指示が来るのですが、

C : ECO 675 Leave AMI Heading 200 ,Descend and Maintain 8,000.

これだけですと、阿見 VOR /13,000 フィートの制限が無効となってしまいますので、実際は、

C : ECO 675 Leave AMI Heading 200 ,Descend and Maintain 8,000 .Cross AMI at or Below 13,000 .

となります。

降下指示が出たら、ただちに降下を開始する。これが原則なのですが、昔からこんなやり取りをよく耳にするんですよね~

C : ECO 675 Descend and Maintain FL160 .
P : ECO 675 Confirm Descend at Pilots Discretion?
C : Affirm ,Descend at Pilots Discretion.

降下開始がパイロットの任せられる場合には、もれなく “ Descend at Pilots Discretion ” を付けて欲しいのですが、その事が完全に守られているとは言いかねますので、パイロットの方も、「すぐに降下する必要はないのだろう」 と思ってしまうのです。そんな訳で、

C : ECO 675 Descend and Maintain FL160 , Start Descend Now.

などと、おかしな降下指示を出す羽目になってしまうのです。

C : ECO 675 Right Heading 120 , Start Turn Now.

とは言いませんものね。
正しい ATC プロセジャーが守られず、間違ったプロセジャーが幅を利かす、『悪貨が良貨を駆逐する』 状態に陥っているのです。次のような指示が出されいるのも、よく耳にします。

C : ECO 675 AMI Restriction Canselled,Climb and Maintain FL390.

前にも書きましたように、FL390 への上昇指示を出せば、阿見 VOR / 13,000 フィートの高度制限は自動的に無効になりますので、キャンセルの指示は必要ないのです。しかしね、これはパイロットも悪い。

C : ECO 675 Climb and Maintain FL390 . との指示に対して、
P : ECO 675 Confirm ,AMI Restriction Canselled?

と聞き返している飛行機がいますからね。管制指示に対して疑義がある時は必ず再確認しなさいとの教育がなされてますので、確認しているのでしょうが、自分の勉強不足と管制指示への疑義を一緒にしてはいけません。

管制方式が変更になった事により、こんな降下指示も出されるようになりました。

C : ECO 675 Descend to Reach FL;160 by SPENS Maintain Mach Point 85 , transit to 310 Knots.

マッハ数一定の降下から、指示対気速度一定の降下に切り替える速度を明示している訳ですが、FMS に [.85 / 310 ] と入力してやれば、マッハ 0.85 から 310 ノットへの切り替えを自動的にやってくれます。この辺りの詳しい事は、09年1月23日、『トランジット・スピード』 を参考にして下さい。

★ 速度調整

羽田などの混雑した空港では、航空機に対して維持すべき速度を指示してくる場合が多いのですが、速度の指示は10ノット単位で行われます。

C : ECO 675 Maintain 300 Knots or Greater, Due to Arrival Spacing.
C : ECO 675 Maintain Present Speed or Less, Previous Traffic 5Miles Ahead, TIA Inbound.

TIA =Tokyo International Airport

こんな指示が出る場合もあります。

C : ECO 675 If Feasible Reduce to Minimum Approach Speed.
C : ECO 675 Reduce to Minimum Clean Speed.

ミニマム・クリーン・スピードとは、フラップを下ろさずに飛行できる最低速度で、-400 の場合、機体重量 55 万ポンドの時は、229 ノットになります。

また、現在の速度から何ノット増やせ、減らせと指示する場合は、

C : ECO 675 Increase Speed by 20 Knots.
C : ECO 675 Reduce Speed by 10 Knots.

『減速と降下を同時に行う事は、特にターボジェット機にとり困難な場合があるため、降下中に減速を指示した場合は、降下率が一時的に減少する可能性がある』 との記述がありますので、減速と降下のどちらを優先するかの指示が行われる場合もあります。

C:ECO 675 Reduce Speed to 180 Knots, Then Descend and Maintain 3,000 .
C: ECO 675 Descend and Maintain 3,000 , Then Reduce Speed 180 Knots.

速度調整を終了する場合には、

C : ECO 675 Resume Normal Speed.

と指示されます。

★ 待機

待機が予想される場合は、待機管制指示を待機させようとするフィックスの到着予定時間の5分前までに発出される事になっています。発出されるはずです・・・・・

C : ECO 675 Hold Southwest of WESTN.
C : ECO 675 Hold WESTN as Publish.

★ 視認進入 (ビジュアル・アプローチ)

視認進入はレーダー管制下において効率的な運航を行うため、計器進入方式によらず、管制レーダーにより飛行場又は先行機を視認するまで誘導された後、目視により着陸する進入方式で、パイロットからの要求の有無にかかわらず、管制側の判断により実施されます。
視認進入の許可が発出された後は、レーダーによる監視が行われませんので、VMC を維持しての飛行、地上障害物との衝突防止、先行機との間隔維持および後方乱気流回避の責任は全てパイロットに課せられます。

先行機がない場合は、当該機から飛行場視認の通報があった後、許可されます。

C : ECO 675 Airpotr 10 O’clock 7 Miles.
P : ECO 675 Airport Insight.
C : ECO 675 Cleared for Visual Approach Runway 16 Left.

先行機がある場合は、先行機視認の通報があった後。先行機を視認できない場合は、飛行場視認の通報があった後、先行機の位置情報を通報した後許可されます。

C : ECO 675 Proceeding Traffic 12 O’clock 5 Miles, 777 on Final Runway 16 Left.
P : ECO 675 Traffic Insight.
C : ECO 675 Follow the Traffic, Cleared for Visual Approach Runway 16 Left, Caution Wake Turbulence.

★ 進入許可

計器進入コースへ誘導された後、進入許可が発出されますが、最終進入コースを横切らせる時は、当該機に対し理由を付けてその旨を通報します。

C : ECO 675 Expect Vector Cross Final Approabh Course for Spacing.

C : ECO 675 5 Miles from MICKY , Turn Right Heading 310 , Cleared for ILS Zulu Rwy 34 Left Approach, Contact Tower 118.1 .

無事に着陸できそうですね。

その他、よく使われる管制用語としては、

Accept (了承します)
C : ECO 675 Do You Accept Charlie 3 Intersection Departure?
P : ECO 675 We Accept. (Unable to Accept)

離陸許可を発出する場合を除き、“ Take-off ” と言う言葉は使わない決まりになっていますので、

C : ECO 675 Do You Accept Charlie 3 Intersection Take-off?

とは言わないのです。テネリフェ事故からの教訓ですね。

Acknowledge (応答して下さい)
C : ECO 675 Hold Short of Runway 34 Left, Acknowledge.

Approved (許可します)
C : ECO 675 Intersection Departure Approved.

Break (応答待て)
C : ECO 675 Reduce Speed 200 Knots Break, USO 800 Right Turn Heading 310 , Cleared for ILS Zulu Runway 34 Left Approach.

Correct (正しい)

Correction (訂正します)
C : ECO 675 Descend and Maintain FL160 Correction, Descend and Maintain FL210 .

Disregard (取り消します)


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