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Look-Ahead terrain Display の活用 [航空関係]

日本の国土は狭く山岳地帯が迫っていますので、滑走路の両方向に精密進入である ILS を設置するのは難しく、ILS の反対方向には非精密進入である VOR アプローチを設定するか ILS からの周回進入で着陸することを余儀なくされていました。
周回進入では地表を確認しながらビジュアルで飛行する必要があり、当然オート・パイロットではなくマニュアルで操縦する必要がありました。
そこに近年になって登場してきたのが ILS のような直線進入ではなくても精密進入が可能となる、RNP AR ( Required Navigation Performance−Authorization Required ) アプローチなのです。日本語にすれば「承認を必要とする、航法精度が指定された」アプローチとなるでしょうか。
このアプローチの最大の特徴は、山岳地帯をモノともせず、右左と旋回を続けながら滑走路へと進入することが出来る点にあります。そして、マニュアル操縦は禁止でオート・パイロットの使用が必須となっています。
更に ILS のように地上施設が必要でなく、机上の計算だけで設定する事が出来るのです。
下の図は熊本空港 RWY 25 へ進入する RNP AR チャートなのですが、進入限界高度は
DA 942ft (DH 300ft) / RVR 1600m と ILS 並みの精密進入が直線進入ではないにも関わらず可能となっているのです。
ILS 07 からのサークリングですと、DA 1190ft (DH 558ft) / VIS 3200m となってしまいます。いずれも航空機の Approach Category D で比較。

4.gif
このアプローチにおける航法精度 RNP は BOCHU RW25 間は 0.3NM、それ以外では 1.0NM となっています。
しかし、このアプローチが行えるのは夜間のみ。昼間ですと絶景となるものを、絶景過ぎて乗客が肝を冷やす?

そして、このアプローチを行っている時、コックピットの ND (Navigation Displays ) には

4.gif

2.gif左のようなアプローチ・ルートが表示されるのですが、この ND の表示だけを見ながらアプローチをするのは一抹の不安があるとは思われませんか?
飛行機は標高 5,223ft (1,592m 肥後国) の阿蘇・高岳を左に見ながら山の合間をぬってアプローチするのですから。
進入ルートは厳密に設定されており、
機上機器にも承認が与えられてるとは言え、周りの状況が見えないまま雲中飛行で降下を続けるのは不安なはずです。

そんな時に不安を解消する FMS の機能が Look-Ahead terrain Display なのです。
スイッチをオンにしますと、
1.gifこのように周囲の障害物の標高が自機との相対高度として色分けされて表示されるのです。
RNP AR ではこのように山肌をぬうようなアプローチが多くなる可能性があるでしょうから。
緑-黄-赤と危険度別に表示され、自機との相対高度が分かるのですが、最新の B787 では次のように表示される設定となっています。
4.gif
山岳地帯でこの機能を利用することはアプローチ段階での安全を高める有効な手段なのですが、私の現役時代の記憶によれば、利用している人は皆無でした。しかし、その有効性の顕著な例が、旭川空港でのインシデントだったでしょう。

4.gif左図ように空港の東側、大雪山系方向の MVA (Minimum Vectoring Altitude:最低誘導高度 ) は10,000ft の筈なのですが、管制官は何を勘違いしたのか?5,000ft への降下を指示し、パイロットも何の疑問も持たずに指示に従ってしまったのです。
比布岳の標高は 7,208ft だと言うのに。







1.gif国土交通省が公表した 推定飛行高度 を見ますと、寒気がしてきます。
函館空港での「ばんだい号」墜落事故。GPWS が実用化されていたなら避けられたでしょうが、航空技術の進歩が今回は助けてくれたのです。
あるコーパイ君が言っておりました。「FMS の機能を有効に利用しようとしたらキャプテンに、お前は FMS に頼らなければ飛べばないのかと言われた」と。

そんな絶滅危惧種のようなキャプテンが居るらしいのです。もっとも誰も危惧してはいないでしょうが。
安全性を高めるためには進歩した航空技術を有効活用する必要があるは当然のことです。.
旭川での B737-800。Look-Ahead terrain Display を表示させていたなら、

gpwsasahikawa.gif
GPWS が作動する前のNDの表示はこのようになっていたはず。黄色で表示されている空域は自機よりも 2,000ft 高い可能性があるのですから、降下指示に誤りがあったことに気付くはずなのです。 が最接近した 7,208ft の比布岳山頂。
旅客機を趣味・趣向で飛ばしてはいけません。最新の航空技術を駆使して最大限の安全を担保するのが利用者に対するパイロットの責務だと考えます。
最後に、私の現役時代には設定されていなかった進入方式ですので、行った経験がないことをお断りしておきます。

所でひとつだけ告白?しておくことが。実は私も一度だけ GPWS “ Whoop whoop pull up” が作動したことがあったのです。函館の RWY 12 に ILS で着陸するために雲の中をレーダー誘導で降下していた時のことでした。当然地上が確認できない状態でしたので、手順通りに
Go-Around 確か 5,000ft まで上昇して函館 VOR へ向かう許可を得て、その後 VOR / ILS で無事に着陸したのでした。
もっともこの時は実際に衝突の危険があった訳ではなく、会社からの情報で以前から GPWS の誤作動が起きやすい地点として周知されていたのでした。この地点には切り立った斜面があるために地表面への接近率が過大となり、Excessive Terrain Closurre Rate が作動範囲内になってしまった結果だったのです。
しかしね~、誤作動などと言ってしまったら GPWS が気を悪くすることでしょう「人間が決めた通りの仕事をしただけなのだ」とね。

PS:聞くところによりますと、
1.gif航空会社は阿蘇遊覧コースの RNAV(RNP) Z を行うことはなく、RWY 25 の時は左図の RNAV(RNP) Y の方を使用しているとのこと。
ちょっと遠回りになりますが。
terrain Display を表示させておけば問題ないと思うのですが、もう少し実績を積んでからとの考えなのかも知れません。



堅い話は置いておいて大相撲春場所、楽しみがひとつ増えました。先場所から話題になっていた「枡席の妖精」妖精と言うには失礼ながら少々お歳をお召しのようですが、40歳辺りでしょうか?
1.jpg
背筋をシャンと伸ばした凛とした佇まいで微動だにせず、時々控えめに拍手されるだけ。
先場所までは花道寄りの枡席でカメラが振られた時でしかお目に掛かれなったのですが、枡席の移動を誰かが手配したのか、常にテレビ・カメラに映り込む絶好の位置で、行司の陰にもならないように僅かにずらしている。これからも取り組み以上に楽しみにしております。

一方、白鵬のわきまえのない態度に辟易していたのですが、休場してくれて爽やかな場所になってくれました。白鵬が居なくても十分に楽しめる今の大相撲。このまま引退してくれることを願ってやみません。
ただね~、休場中の二横綱の後を継ぐべき大関達がいまいち不甲斐ない事が気掛かりなんですが。


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