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マニューバリング・スピード [航空関係]

2.jpgフラップを下ろした時の速度として奨励されているマニューバリング・スピード、フラップの位置によって変わってくるのは当然の事ですが、UP~10までの間は20ノット等間隔、10~REF (25or30)の間は10ノット等間隔に設定してあります。
このフラップ・スピードは、Minimum Maneuvering Speed にある程度のマージンを持たせた速度となっているのですが、運航の簡易化のため、あえて等間隔としているのです。




そこで、実際はどうなのかを見てみますと、
緑線は、各フラップ位置における、垂直Gとスティック・シェイカー作動速度の関係表しています。

blogflapspd.jpg
図のように、フラップ・スピード(緑丸)はフラップ位置によってマージンが大きく変わってきており、UP~5では1.6g以上、10で1.5g、20で1.4g付近となっています。
このフラップ位置によるマージンを、ある一定値(例えば1.4g)に取ったとしますと、当然の事ながらフラップ・スピードは等間隔とはならず、運航もやや煩雑となってしまう事でしょう。

blogAirspeedInd.gifただ、アナログ計器の頃は、Bug (虫)と呼ばれるプラスチック片をスライドさせて、Vref+20や+40の位置に置く必要がありましたので、等間隔になっていないと面倒だったのですが、現在のグラス・コックピットではコンピュータが勝手に表示してくれますので、半端な数値となっても問題ないと思われるのですが・・・・・






もう一つ。フィックスによってホールディング・スピードは変わってくるのですが、200 ~230 ノット以下との設定になっていますので、ホールディングを行う場合、フラップを1まで下ろす必要が生じるのですが、1.3gが確保されていればよいのであれば、殆どの場合、フラップを下ろす必要がなくなります。


実際の運航では、どのようにして着陸のためのフラップ・スケジュールを行っているかと言いますと、
例えば、フラップ1/速度201ノットで飛んでいるとしますと、ネクスト・フラップであるフラップ5をオーダーし、フラップが5まで完全に下りきった後、フラップ5スピードである 181 ノットへと減速しています。
フラップが5まで下りるのには時間が掛かりますので(約20秒)、その間オート・スロットルは 201 ノットを維持しようと、増加する抵抗に負けないよう、エンジンの出力を上げる事になるのです。
そして、フラップが5に下りきったら、181ノットへと減速の操作をしますので、今度はエンジンの出力を減じる事になります。
そうなりますと、前にも書きましたように、不快なエンジン出力の増減が起きてしまう訳ですね。

最初に-400の訓練を受けた時は、フラップ5をオーダーしたら、直ぐにフラップ5スピードにスピード・バグをセットしていた記憶があります。あるいは、オーダーした後、フラップ1と5スピードの中間(191ノット)まで減速し、5まで下りきった後に、5スピードである 181 ノットにしていたような気もします。

では、フラップが下りきる前に、ネクスト・フラップの速度に減速してしまった場合のマージンはどうなるのでしょう?それが上の図の赤丸なのですが、・・・・・
フラップ20以外では、1.3g以上のマージンがあるようですね。
ただし、フラップ30で着陸する場合は、マージンが7ノットばかり減ってしまいますので、ちょっと苦しくなるか?
ならせめて、フラップ・スピードの間隔を20ノットに設定している、UP~10の間だけでも、半分減らしを認めて欲しいものです。
乗客の方に不快感、不安感を与えないためにも。



川下り船が転覆し、子供を含む乗客数名が死亡するという悲惨な事故が起こってしまいました。
マスコミは、ここぞとばかりに川下り船を運航していた会社を非難しておりますが、後から非難するだけなら菅にだってできるでしょうに?
こんな事故が起きる度に思うのですが、なぜ前もって危険性を指摘し、問題提起をしなかったのかと。
川下り船の取材は何回もやっていたでしょうに。
原発の津波被害も同じ事。何百年か前に10メーターを超えるような大津波が発生していた事を知っていたのなら、なぜ普段からその危険性を指摘しなかったのか?
このブログを、「けしからん」 と言う人がいますが、私は航空安全に関する問題提起をしているつもりです。例えば、
「Look-Ahead Terrain Display を有効活用する事により、GPWS が作動する前に、山岳地帯への接近を察知できるはずだ」 とかね。ブログにケチをつける前に、しっかりと教育せんかい!



サラリーマン NEO 『自由研究』 は久しぶりの秀作でした。
「あなた~・・・今日は誰と戦ってきたの~」
最後に妻のキツ~い一言。



今月の電気使用量。震災前の52%減、前年同月比72%減の207kwhでした。
涼しい日が続いていますが、今年の夏はエアコンを使わずに乗り切れそうです。

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トメ

FDさんこんにちは。

えっ!エアコン無しですか!
我が家はワンコの関係でエアコンを使わざるを得ませんが、ワンコがいなくてもエアコン無しは考えられません。少し甘いかな…、設定温度を高くして節電に励んでいます。

私はこのブログは絶妙なバランス感覚を維持した素晴らしいブログだと思っています。
会社員である前に、運航責任者としての立場を常に意識して記載されていることが良くわかり、それゆえに不快感を感じることがありません。
問題提起についても、もっと声高におっしゃりたいのでしょうけど、読者に不安を感じさせない配慮もしていらっしゃいます。さすがです。


by トメ (2011-08-22 16:23) 

おん

キャプテンにご質問です。
着陸後のエンジンリバースですが、エンジンの轟音を元にすると、強力に掛かっている時とそうでない時があるように思います。
エンジンリバースの強弱は調整出来るのですか?
by おん (2011-08-23 00:46) 

FD

我が家の犬たちはどちらかと言えば寒がりのようで、日中わざわざ陽の当たる場所で
寝ている時があります。
さすがに朝晩は涼しく感じる日が多くなってきました。
我慢の日々もあと僅かでしょう。

スラスト・レバーの前に付いています、リバース・レバーを引き上げる事により
リバースを使う事が出来ますが、その引き上げ具合で強弱の調整が出来ます。
現在は燃料節減のため、安全を損なわない範囲で弱リバース(アイドル・リバース)
を奨励していますが、-400では約200ポンドの節減効果があるそうです。
ゴォーというリバース音と共にかなりの減速感があると思いますが、
その殆どは車輪ブレーキによる減速効果です。
音が派手な割には効果は少ないのです。


by FD (2011-08-23 18:29) 

けしからんさん

>このブログを、「けしからん」 と言う人がいますが、
ご多忙のところ失礼致します。
が…、そこの「「けしからん」 と言う人」何がどう「けしからん」のですか?
よろしくお願い致します。

by けしからんさん (2011-09-05 17:22) 

なおと

けしからんさん、横から失礼致します。

が…、『何がどう「けしからん」のですか?』……そこは突っ込むところではないと思います。。。。

by なおと (2011-09-06 21:29) 

フクロウ

お久しぶりです!
少し疑問があり、コメントさせていただきました。

とある施設で、787のフライトシミュレーターに時々乗っているのです。
トラフィックパターンを飛ぶことが多いのですが、なかなか難しく…
ダウンウインドでフラップを5から20に下ろす場合…、フラップ20スピードに減速しなければなりません。
最初、パワーを絞って減速し、20スピードになったらパワーを足していたのですが、
高度は狂うし、そこでバタバタするのです。で、考えて、
フラップを下ろしたら抵抗は増えるのだから、ピッチだけコントロールして高度を保ち、自然に減速するのを待つ。
そして20スピードになったらそれを保つようにパワーを足すというやり方でやっているのですが…
フラップが降りきるまで減速してはいけないとなると、このやり方はまずいのでしょうか…
実際はどんなやり方でされているのかを知りたく、コメントさせていただきました。
すみません、お時間のあるときに教えていただければと思います。
よろしくお願いいたします。
by フクロウ (2024-03-05 21:20) 

FD

如何にスラストの増減を減らすかと考えた結果が次のような方法でした。
但しオートパイロットとオートスラストを使用していますので参考になるかは不明ですが。以下の部分を更に下の記述のように変えたのです。

例えば、フラップ1/速度201ノットで飛んでいるとしますと、ネクスト・フラップであるフラップ5をオーダーし、フラップが5まで完全に下りきった後、フラップ5スピードである 181 ノットへと減速しています。
フラップが5まで下りるのには時間が掛かりますので(約20秒)、その間オート・スロットルは 201 ノットを維持しようと、増加する抵抗に負けないよう、エンジンの出力を上げる事になるのです。
そして、フラップが5に下りきったら、181ノットへと減速の操作をしますので、今度はエンジンの出力を減じる事になります。
そうなりますと、前にも書きましたように、不快なエンジン出力の増減が起きてしまう訳ですね。

フラップ1で飛んでいるとき、201ノットではなく+10ノットの
210ノットで飛びます。
そしてフラップ5をオーダーすると同時に速度を201ノットにするのです。
そしてフラップ5になったら、速度を181+10ノットの190ノットとし、常にマニューバリング・スピード+10ノットを繰り返すのです。

by FD (2024-03-06 21:36) 

フクロウ

回答ありがとうございます。
マニューバリングスビードプラス10ノットで飛んでいれば、必要な速度を下回ることなくスラストの出し入れが少なく済むということなのですね。
ありがとうございます。
これは、マニュアルで飛ぶトラフィックパターンにも応用できそうですね。
by フクロウ (2024-03-08 21:46) 

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