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FMS対職人気質 [航空関係]

沖縄へ飛びました。巡航高度は3万8千フィートでしたが、上昇中を含めて大きな揺れもありませんでしたので、まずは快適なフライトを続ける事ができました。那覇空港の地上風は10ノット程度の北東風でしたので、使用滑走路は36となってました。

FMS 搭載機は降下を開始する前にアライバルのセットアップを行っておく必要がありますので、ILS36を選択し、更に永良部アライバル/グレース・トランジションを選択する事になるのですが、永良部 VOR から31海里の所にある FL200以下の高度制限をキャンセルし、那覇 VOR から20海里北東の DME・アーク開始点(D042T)に任意の高度を入力するのが一般的なやり方です。
この地点に任意の高度を入力しますと、それに対応するT/DがND(Navigation Didplay )上に表示されます。

いつものように、那覇コントロールから1万2千フィートまでの降下指示がきて、T/Dのやや手前から降下を開始したのですが、パワーをアイドル・スラストまで減らさずに、約50パーセントN1のままにして、ゆっくりとした降下率で降下を続けましたので、FMS が計算する適切な降下パスからは、少しずつ高くなってくるのは当然の事です。

その後、沖縄アプローチへ移管された後、ヘディング210で、高度6000フィートまでの降下指示がきました。この辺りでやっとアイドル・スラストまでパワーを減らしたのですが、適切な降下パスからはかなり高くなってしまってました。
私の方のNDには CF36を基点とした Off Path ディセントのサークルを表示させていましたので、その事は手に取るように分かっていたのですが・・・・・

その後、CF36へのインターセプト・コースの設定を行いましたが、その時のNDの表示が下の図です。

飛行機の位置は△の頂点の位置にあるのですが、Off Path ディセントのアウター・サークル(青線)とインナー・サークル(白線)の中間付近に居る事になりますので、このままショート・ベクターで CF36へ誘導された場合はスピード・ブレーキが必要になってくる事を示しています。そして VNAV のバーティカル・トラック・エラーの表示は適切なパスより6500フィート高い事を表しています。

このバーティカル・トラックエラーを見て高い事に気付いたのか、スピード・ブレーキを引いて降下率を増加させたのですが、ここでスピード・ブレーキを使うのはまだ早いんですよね。
何故なら、この先どんな誘導をしてくるのかがまだ分かりませんが、インナー・サークルの外に居るのですから、ヘディングを西に振られてからスピード・ブレーキを使っても十分に間に合う位置なんです。
逆に、このままスピード・ブレーキを使い続けた後、ワイド・ベクターになってしまったら、またパワーを足す羽目になってしまいますよ。
この時も飛行機の位置がアウター・サークルの外に出たにもかかわらず、スピード・ブレーキを使い続けてしまいましたので、CF36の15海里も手前で2000フィートに到達してしまい、延々と水平飛行を続ける事を強いられました。

昔ながらの、距離に三掛けでやってたんでは無理なんです。1万フィートで250ノットに減速する分も考慮しなければなりませんからね。FMS の有効活用なくして、効率的なフライトは行えません。
でもね、パイロットという人種は職人気質と言いますか、最新式の飛行機の乗っている割には考えが古いんですよ。「お前は FMS に頼らないと、飛べないのか!」 と怒鳴りつけたりしてね。まっ、職人気質の全てを否定する訳ではありませんがね。

コンピュータ仕掛けと言えば、現代のF1もそうでしょうね。でも、F1で「俺はコンピュータに頼らなくても、速く走れるぞっ!」 なんて言っているドライバーが居たら、すぐに首でしょうね。F1の場合、すぐにタイム差となって表れますからね。1周でコンマ5秒遅ければ、勝負になりません。
ところが飛行機の場合、その差が数字となって表れにくいんですよ。、「高くなってしまったからスピード・ブレーキを使おっ。あれっ?今度は低くなってしまったので、パワーアップしよっ!」こんな弥次喜多道中のようなフライトをしていても、データとして出てきませんので、相変わらずの事が通用してしまうのです。

スピード・ブレーキを使ったからと言って、その全てが好ましくないフライト。と言う訳ではありません。
千歳の19のように、出発機との間隔を取るために、1万2千フィートでの水平飛行を強いられ、最後にスピード・ブレーキを使わざるを得ない。と言う場合もありますし、東京から小松へ飛ぶ時のように、高い山脈を越えた後、スピード・ブレーキを使って高度処理を行わなければならない場合もあるからです。
ただ、管制上の制約もなく、自由な降下プラニングができたにも関わらず、スピード・ブレーキを使わざるを得ないようなフライトになってしまったのでは、「もうちょっと考えなさいよ」 となる訳です。

操作手順についての細かい決まりはあるが、飛行機の飛ばし方についての決まりはない。と言えるでしょうが、「-400をどう飛ばすか?」 についての会社のコンセプトは明確です。『より効率的な運航を実現するために、オート・パイロット、オート・スロットルの使用と合わせて、FMS を広範に活用することが奨励される』
ところが、パイロットの職人気質の部分が、これに抵抗しているのでしょう。


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yuki

いつも楽しいお話をありがとうございます。機長さんの中にも、そのような飛び方をする方がいらっしゃるということでしょうか?
by yuki (2007-12-08 14:03) 

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