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差し替え [航空関係]

運航を行うにあたって必要となる、ルート・マニュアルや会社の規程類は加除式となっており、改訂されたページだけを差し替える事ができるようになっています。
ルート・マニュアルには日本国内編、北米編、欧州編、アジア・パシフィック編などがありますので、その差し替え作業には結構時間を取られてしまうのです。

前にも書いた事なのですが、新しい滑走路のオープンと言った大きな変更は、4週間毎の木曜日に全世界一斉に行う事になっていますが、(羽田4本目のD滑走路は10月21日の木曜日にオープンします)
細かい変更は随時行われますので、その都度新しい改訂ページが配布され、せっせと差し替え作業を行う事になります。
昨年は日本国内だけでも約60回の改訂が行われました。

と言う訳ですので、会社を長期にわたって欠勤しますと、この差し替え作業が溜まってしまって、往生する事になるのです。
そして今回、私が欠勤している間に10回以上の改訂が行われていたのですが、我々パイロットの業務に関わる重要な会社規程の改定も行われていました。

その改定とは、副操縦士の離着陸操縦業務に関わる部分なのですが、ご存じのようにある一定の条件の下、副操縦士が離着陸操縦を行う事は認められております。一定の条件とは、

・ 離着陸時の横風成分が、その機種に許容される最大横風成分値の1/2以下である事。
・ 雪氷滑走路ではない事。

等が主な所なのですが、これまで明確に規定されていなかった、離着陸操縦の範囲が、今回の改定で明示されるようになったのです。
離着陸操縦の範囲が明確になった事に異論はないのですが、その範囲が大いなる疑問で、私には納得がいかないのですよね~。新しい規程いわく、

離陸操縦とは、離陸滑走を開始する時点から、アフター・テイクオフ・チェックリストを終了するまでの間とする。

離陸後、どんな操作が行われるのか、手順を並べてみますと、

・ 車輪を上げる。
・ 最初の旋回を行う。
・ 対地1,500フィートで予め設定しておいたクライム・スラストに自動的にセットされる。
・ 対地3,000フィートから加速を開始して、フラップを上げて行く。F10→F5→F1→UP
・ フラップを上げ終わったら、アフター・テイクオフ・チェックリストを実施する。

となりますので、横風が強かったり、雪氷滑走路から離陸した時など、この操作が終わった後ではないと、副操縦士に操縦を任せられない事になってしまったのです。

blogcoppf.jpg離陸後の美味しい(技倆的に)段階での操縦が制限されてしまいましたので、美味しい所は全部キャプテンに食べられてしまう結果になってしまいますよ。

キャプテンはいささか食傷気味なんですがね。

それでは、これまではどうしていたのか?と言いますと、離陸して安全上問題ないとキャプテンが判断した時点で、操縦を交代していたのです。

機体が地面を離れてしまえば、横風も滑走路の状態も関係ない訳ですから、色々な場面での経験を積んで、技倆の向上に役立てて欲しいのです。


それでは、何処で交代すればいいんだよ?と問われれば。
一つの目安が、運用限界に定められている、「離陸後対地250フィート以上でオートパイロットを使用できる」 と言う規程でしょう。(-400の場合。機種によって違いはあるでしょうが)

250フィート以上でオートパイロットに操縦を任せてよいのであれば、コーパイロットにも任せてよいとは思いませんか?アフター・テイクオフ・チェックリストが終わった後では面白くないよね。
ただ、勘違いしてもらっては困るのは、「250フィートで必ず操縦を交代しなければならない」 と言っている訳ではないと言う事です。
状況を見て、もう少し安定してからとキャプテンが判断した時は、交代を遅らせれば済む事ですから。
着陸の場合は対地1,000フィーまでに交代としてますが、DAまでに操縦を引き継げば問題ないでしょう。

乗員の操縦技倆を過小評価しているがごときこんな規程、誰が考えたのだろう?
とうてい乗員だとは思えないのですが、検討の場には乗員も居たでしょうに・・・・・
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