SSブログ

CMV [航空関係]

『羽田 LDA Rwy 22』 のコメントに、CMV(Converted Meteorological Visibility )という聞き慣れない言葉が出てきました。

私がこのブログを続けている理由の一つに、「自分自身の勉強になる。あれはどうだったっけ?と疑問に思った時、関連するブログを読み直してみると、再度理解する事が出来る」 があるのですが、この CMV も、適用がややこしいし、CMV を厳密に適用して着陸する機会も滅多にないという事で、「CMV って、どうだったっけ」 となってしまうのではないかと考え、少しばかりの解析を行ってみる事にしました。

例えば、千歳の滑走路19L へ RNAV アプローチで着陸する場合、「ランディング・ミニマは DA 570フィート、CMV 1800メーター」 などと、ブリーフィングでは言っているのですが、CMV 1800メーターとはどんな状況なのか?はっきりと認識していない場合が多いのではないかと思っています。少なくとも私の場合は。

では CMV 1800メーターとはどんな状況? RVR とは違うので、視程の事?
視程であれば、VIS と表示すれば済む事なので、視程でもありませんよね。

昔はこんなややこしい事はなかったのです。R600m / V800m との表示になってましたので、RVR が観測されている時は RVR 600mを適用し、されてない時は視程800mを適用すればよかったのですが、CMV という概念が導入されてからは、CMV を適用するにあたっての状況判断と、少しばかりの係数が必要になってきたのです。

CMV の原則。ILS CAT Ⅰ・VOR・RNAV などの直線進入(周回進入ではないという意味の)に適用する。
RVR =CMV 値として扱う。

CMV から、対応する地上視程を導き出すための係数は、昼間 X 1.5 / 夜間 X 2.0と規定されていますので、CMV 1800mから導き出された地上視程が、昼間では1200メーター以上、夜間では900メーター以上(進入灯・滑走路灯が運用されている)である場合、進入を開始する事が可能となるのです。

千歳19L の着陸に RVR が適用されないのは、19L には RVR 観測装置が設置されていないからで、那覇18 RNAV の航空機カテゴリーDだけが、RVR 2000ではなく CMV 2000となっているのは、1800メーターを超える RVR 値は報じられないからなのです。

ただ、私はこの CMV の適用について、少しばかり疑問な点もありますので、今後更なる研究が必要だと考えております。

取りあえず、疑問な点の一つを物語風に語ってみますと、
B737と-400が那覇空港へ向けて進入を開始しようとしています。すでに日没を過ぎており、那覇の天候は南寄りの風で、滑走路18 RNAV アプローチが行われていました。
地上視程は1600メーターで、RVR も1600メーターと通報されています。
B737のキャプテンEDは、自己に適用されるランディング・ミニマをアプローチ・チャートで確認しました所、RVR 1800メーターである事が確認できました。
しかし現在の RVR 値は1600メーターですので、着陸できる最低気象条件を下回っています。
そして、PAR も故障していて使用不可能。EDキャプテンは代替空港へ向かう決断をしたのでした。

一方の-400、FDに適用されるランディング・ミニマは CMV 2000メーターですので、CMV の原則により、対応する地上視程を計算しますと、1400メーターとなりました。(滑走路灯のみ、夜間=X 1.5)
現在の地上視程は1600メーターと最低気象条件を上回っていますので、進入を開始する事が出来るではありませんか!

中型機であるB737(カテゴリーC)が着陸できず、大型機である-400(カテゴリーD)が着陸を試みる事が出来るこの矛盾。
私の物語に何処か勘違いが?・・・・・うん?待てよ、
CMV=RVR が原則で、RVR が観測されている訳だから、この場合のカテゴリーDのランディング・ミニマは RVR 2000メーターと解釈するのか? CMV を地上視程に換算するのは、あくまでも RVR が観測されていない時?

なら、RVR の観測を止めてくれと頼めば、CMV を地上視程に換算して、1400メーターまで進入可能なのか?
とにかく CMV は厄介じゃ!

nice!(3)  コメント(11)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 3

コメント 11

acars

毎回楽しく拝見しておりまする。

さて、物語の設定に少し「勘違い」があるみたいなので失礼いたします。
「地上視程1600 RVR1600」は、勘違いではないでしょうか?

RVRが報じられるには、地上視程は1500以下である必要があるからです。

「地上視程1500 RVR1600」で如何でしょうか?
これで話を進めて行きますと、

ご高察のとおりRVRが報じられているので、CMVに換算は出来ません。
従いまして、LDG MINのRVR値が適用されます。

OKAのRNAV RW18では、
Cは、CMV/RVR 1800、Dは、CMV/RVR 2000
ですので、RVR1600では、どちらも着陸不可能となります。

しかしながら、RVRが報じられていないとすると、CMVは、

地上視程1500×1.5=2250(RL)となり、
LDG MINの1800と2000を上回り、どちらも着陸可能となります。

では、RVR2000って何よ?って??が残りますね。
恐らくCMV=RVRとしている「便宜」からだと。

あと不明なのは、DがCMV2000とだけ
Chartに記載されているのでしょうか?

記載は、CMV/RVR2000ではなかったかと?
これは小生の勘違いか?
by acars (2010-08-12 04:03) 

FD

コメントありがとうございます。
地上視程(卓越視程)とRVRに関して少し整理させて下さい。

卓越視程は良好なのに、滑走路の接地点辺りに霧がたまって、RVRが非常に悪いという状況は結構発生しています。
その為、RVRを報じる条件は視程ではなく、RVR1800以下の時に報じるようになっております。

例としまして、今現在の中部セントレアのMETARは、
120000Z 29007KT 260V330 3500 R18/1400VP1800U +SHRA
FEW010 SCT015 BKN030 26/25 Q1006 TEMPO 6000 -SHRA
と報じられています。

那覇のミニマ・テーブルには
C :RVR 1800m
D :CMV 2000m
のみの表記となっております。

by FD (2010-08-12 09:51) 

acars

再度失礼いたします。

RVRは、卓越視程あるいは方向視程が1500以下またはRVRそのものが1800以下で報じられますよね。

RVRが報じられる基準を両方(地上視程、RVR値)ともに下回ってるほうが
物語としては、面白いかなぁ~と思った次第です。

で、LDG MINの表記ですが、
AIPでは、CMV/RVRとなっております。

FDさんのChart表記がCMVのみあるいは、OKAのようにRVRとCMVになっているのは、「面白い」ですね。

この表記では、確かに「厄介」ですね。





by acars (2010-08-13 00:00) 

FD

勉強になりました、ありがとうございます。

インターネットの情報は玉石混淆、間違ったデータや古い基準のデータもあるようですが、RVRの観測基準に関しましては、中部航空地方気象台のデータが最新のようです。

http://www.jma-net.go.jp/chubu-airport/vis.htm

RVRが1600m以下になった時に通報されるとしているHPもあるようですが、これは古い基準でして、現在は1800m以下になった時に通報されます。

RVR2000mと通報される事はあり得ませんので、
CMV/RVR2000mと表記するのは正しくないと言えるかも知れません。

by FD (2010-08-13 12:57) 

MOMO

いつも興味深く拝見させていただいています。

地上視程1600mかつRVR1600mにおけるカテゴリーDの那覇RNAV RWY18に関するこれまでの考察をまとめると、

FDさんがお持ちのチャートには「CMV 2000m」と、
AIPには         「RVR/CMV 2000m」と記載されている。

「CMV 2000m」とだけしか書いていないものを見てしまうと、
FDさんが本文で書かれているような解釈がなされるのも当然と思います。

しかしAIPに「RVR/CMV 2000m」と書かれていることを考えると、
カテゴリーDの航空機にもRVRが観測されている以上はミニマとして適用される値は「RVR 2000m」である、
というのがCABの主張と思われます。(FDさんが後半述べられているように)
よってカテゴリーDも降りることができない。

しかし、RVR 2000mという値は観測されませんので、
FDさんがお持ちのチャートには便宜上「CMV 2000m」とだけ記載がされているのだと思います。
この記載は一見合理的ですが、
しかしこれが誤解を発生させる原因となっているのではないでしょうか。

by MOMO (2010-08-16 19:52) 

FD

コメントありがとうございます。
ルート・マニュアルの基本部分にこんな記述がありました。

CMV/VIS Conversion Table shall not be applied when calculating
Take-off,Category Ⅱ/Ⅲminimums or when reported RVR is available.

となりますと、RVRが報じられている時(RVR 1800m以下)には換算表は使えませんので、CMV2000=RVR2000と解釈し、「カテゴリーDは進入を開始する事が出来ない」 と考えるべきでしょう。

そこで、RVRが報じられるもう一つの条件、VIS1500m以下の場合を考えてみます。
この時、RVRは良好で、1800mを超えていたとしますと、
VIS1500 R18/P1800と報じられるでしょうが、この場合のRVRの信頼性はない
(RVR値がいくつなのか全く分からない)と考えるべきでしょうから、RVRを無視しても構わないのか?はたまたRVRが報じられている場合に準じるのか?これまた考え込んでしまいます。

by FD (2010-08-19 12:56) 

MOMO

返信ありがとうございます。

RVR/P1800mだった場合の取り扱い方、仰るとおりです。
考え込みました。
いろいろ書物をあさった結果、新たな発見がありましたのでご報告させていただきます。

飛行方式設定基準において、
「最低気象条件との比較において1800mを超えるRVRは適用されず、地上視程通報値又はCMVが適用される」という一文がありました。

順を追っていきます。
まず原則として、RVRが通報されているときはその値を適用しなければなりません。
・地上視程1600mかつRVR1600mである場合のの那覇RNAV RWY18
カテゴリーCの飛行機は当然降りることはできませんでした。
カテゴリーDの航空機はCMVを適用できるかと思いきや、先の設定基準の一文から、1800m以下のRVR通報値は最低気象条件との比較に使わねばならず、RVR/CMV2000m(FDさんお持ちのものではCMV2000mですが)が最低気象条件ですから、RVR2000mとRVR通報値との比べ合いとなりカテゴリーDも降りることができませんでした。
ここまでは前回の私のコメントと同様です。

次に「VIS1500m R18/P1800m」と通報されていた場合、
「最低気象条件との比較において1800mを超えるRVRは適用されず、地上視程通報値又はCMVが適用される」
これを解釈すると、カテゴリーCもDもCMVを適用し、めでたく降りることができた、となのるのではないでしょうか!?
RVRが通報されている場合は原則使わなければなりませんが、その例外を示したのが先ほどの一文と思われます。

さらに、ですが、
私の組織規定においては「RVR値の適用方法について」という項目があり、
「1800mを越えるRVR値が通報されている場合にはCMVを適用するが、その通報には少なくともRVR1800mが確保されていることが含まれていることから、
・RVR/CMV1800m以下の最低気象条件(例RVR550m等)との比較においては、RVRを適用しabove minimaと判断し、
・RVR/CMV1800mを超える最低気象条件(例CMV2000m等)との比較においては、RVRを適用せず、CMVを適用する。」

といった大変便利な記述を発見しました。
これでなんとか、大方問題が解決できたように思われます。

もしかしたらFDさんの組織の規定にも同じような記述があるかもしれません。もしお暇がありましたら探されてみてください。
大変長文失礼いたしました。
by MOMO (2010-08-21 00:15) 

FD

私も今日、たっぷり5時間勉強する時間がありましたので、色々調べていました所、
「RVR値の適用方法」 なる文章を発見しました。
発見したと言いますか、自分でその部分にマーカーペンでマーキングを付けていたのでした。三歩歩けば忘れてしまうのか?!

VIS1400 R18/P1800と報じられていれば、カテゴリーC、D共にAbove minima

VIS1200 R18/P1800なら、カテゴリーCはAbove minima カテゴリーDはBelowと言う事になります。

残る問題はVIS1400 R18/1400などと報じられた場合ですね。
はっきりとしたRVRが報じられている訳ですから、共にBelowと考えるのが常識的でしょうが。
by FD (2010-08-21 14:17) 

MOMO

VIS1400 R18/1400 の場合ですと、
やはり
「最低気象条件との比較において1800mを超えるRVRは適用されず、地上視程通報値又はCMVが適用される」
から、
1800mを超えないRVRは適用せざるを得ないと解釈できそうですね。
よってCMVでの勝負に持っていくことはまかりならず、
カテゴリーCもDもBelowとなると思います。
論理的にも問題ないですし。
ほぼCMVは見えてきました。ありがとうございます。

話がCMVからずれてしまいますが、私がわからないのはRVRでVariableが通報されたときです。
例えばこの那覇の場合で、

R18/1400V1800N と通報のときにカテゴリーCは降りることができるのか?
VIS1400 R18/1400VP1800N と通報のときにカテゴリーDは降りることができるのか?

ようはVariableのRVR値はどう使用するのか、という点が各種規定には記載されていないように思います。
実運航ではどうされているのでしょうか?
by MOMO (2010-08-22 23:30) 

FD

確かにRVRでVariableが通報された時の扱いについて、はっきりと記載された規定はないようですが、R18/1400V1800N と通報された時、適用できるRVR値は1400mだと理解しておりますので、カテゴリーCは降りる事ができないと考えます。

実運航で、こんな厳しい気象状態になった記憶はありません。


by FD (2010-08-23 15:36) 

MOMO

Variable の時は低い値をとるのですね。
ありがとうございました。
by MOMO (2010-08-25 20:56) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0