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福岡空港MVAチャートの怪 [航空関係]

空港へ離着陸する飛行機を誘導するためのレーダー、ASR(Airport Surveillance Radar)が各空港に設置されていますが、管制官が着陸のための降下を指示する時、飛行機が飛んでいる位置によって、降下させる事ができる最低高度が異なります。その高度を最低誘導高度 MVA(Minimum Vectoring Altitude)と呼んでおりますが、下の図は長崎空港の MVA チャートです。

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レーダーの設置されている地点(赤い点)を要として、扇のように拡がった空域を細分化し、 MVA を設定していますが、その空域にある最高障害物+1000ft 以上が MVA となります。(80 は MVA 8000ft を示しています)MVA は空港から遠くなるほど高くなっている事が分かると思います。黄色い線は前回、長崎に ILS で着陸した時に誘導された航跡を示しています。
MVA 以上を保ちながら 8000ft-5000ft-2600ft と階段のように降下させられた理由が分かりますね。8000ft の次は 6000ft でもよかったような気もしますが、通過したルート上に長崎進入管制空域の下限が6千フィートを超える、とされている部分がありますので、(福岡アプローチが管制している佐賀空港上空の空域)8000ft-5000ft となったのでしょう。

長崎の MVA チャートには特に疑問はないのですが、次の福岡空港の場合は何か変ですよね。

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扇の要(赤い点)が二カ所あります。上方の要は福岡空港のレーダーなのですが、下は何でしょうね?アッと驚き、下の要は熊本空港のレーダーなんですよ!福岡のアプローチコントロールは福岡と熊本のレーダーを合成した画面を使って行われているのです。そしてこの方法は、福岡に ILS Rwy 34 が設置されてから行われるようになったのですが、何でこんな事をする必要があったのでしょう?

上の図では 、ピンク部分の MVA は 4500ft となってます。と言う事はこの空域より遠い所(図の下方、南側)では飛行機を 4500ft 以下には降下させられない事になります。一方、ILS Rwy 34 の GSIA(Glide Slop Intercept Altitude)は 4000ft ですので、これではレーダー誘導による ILS アプローチを行う事ができません。
そこで熊本のレーダーと合成する事により、青色の部分の MVA を 4000ft に設定できるようになり、レーダー誘導による ILS アプローチが可能となった訳です。

と言う事は、熊本空港の運用時間が終わる午後9時30分以降に ILS Rwy 34 を行う場合は、レーダー誘導ができませんので、HARRY アライバルをフルに行う必要があります。そのため HARRY アライバルに必要な佐賀 VOR は24時間運用となりました。



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