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最小リスク [航空関係]

羽田から那覇へ向かう場合に使われる SID(標準計器出発方式)は浦賀デパーチャー/オーシャン・トランジションになりますが、焼津 NDB 上空までに巡航高度に達しておく事が求められています。
機種、機体重量、偏西風の強さなどによっても変わってきますが、巡航高度が高い場合、例えば FL400などの場合は、焼津までに巡航高度に達するのは、かなり厳しい状況となるでしょう。

そこで、地上で管制承認を要求する時、焼津までに上昇可能な最大高度を通報しておけば、その通報した高度で焼津を通過する承認が得られますので、性能的な問題が解決されます。
焼津を通過し、西から羽田や成田へ向かう飛行機との間隔が取れた後、予定した巡航高度に上昇する手順となっています。

ところが FL380など、かなり高めの高度を通報している便が結構多いのですが、ホントに上がれるのかね?と心配になるんですよね。
あんまりギリギリの高度を通報しない方がいいのでは。ギリギリの高度を通報して、「やばい!上がれそうもない」 となった時、困るでしょうに。

上昇推力として使えるパワーは、
747-400 a: CLB/CLB1/CLB2
747-400D : CLB/CLB2/CLB3 となっていますが、上空になるほどその推力差も少なくなってきますので、FL300を過ぎた辺りで慌ててハイパワーを使っても、あまり効果がないんです。


ですから地上では低めの高度、FL340辺りを通報しておいて、上昇中に行けそうだと思ったら、FL360、FL380等を改めて要求すればよいのです。

最大の上昇推力である CLB からそれぞれ10%、20%、30%減となっています CLB1、CLB2、CLB3は1万フィートを超えますと徐々に CLB の推力に近づいていき、CLB1は3万フィートで、CLB2と COB3は3万5千フィートで CLB と同じ推力になります。

那覇行きなら、出発前にこんな管制承認がくるでしょう。
“◯◯◯123 Cleared to NAHA Airport via URAGA 7 Departure Ocean Transition SAKAK Flight Plan Route Maintain FL340 Squawk4321”
それを聴きながら、PF である私は CDU のスクラッチ・パッドに3404321と打ち込みます。
そして PNF がトランスポンダーに間違いなく4321とセットした事を確認した後、スクラッチ・パッド上の4321を消去すのですが、指示された高度、340は消さない事にしています。
せっかく入力した340ですから、そのまま消してしまうのは惜しいではありませんか。これを有効活用しない手はありません。

ところで近ごろ流行っているのは、この340などの高度情報をフィックス・ページに入力する事なのですが、私はいつも言っています「同じ手間を掛けるんだったら、レグ・ページに入れたら」 と。

羽田を離陸する時、アルト・ウインドーには浦賀の制限高度13000フィートがセットされています。上昇を続けていますと、通常 浦賀の制限高度はキャンセルされるのですが、“Climb and Maintain FL340” の用語ではなく、 “URAGA Restriction Cancelled ” との言い回しでキャンセルされた場合、ちょっと迷う時がありませんか?「え~と、幾つまで上昇していいんだっけか?」 とね。
この時アルト・ウインドーにセットすべき高度は、当然 FL340なのですが、間違えて巡航高度 FL400をセットしてしまったような場合、フィックス・ページに FL340と入力しているだけですと、単なるメモリーに過ぎませんので、そのままでは飛行機は FL400まで上昇してしまいます。しかしレグ・ページのYZ(焼津)に FL340と入力しておけば、アルト・ウインドーに FL400と入力したとしても、YZまでは FL340以上に上昇する事は絶対にありません。

フィックス・ページに入力するのも、レグ・ページに入力するのも同じ手間ではありませんか。常に最小のリスクを求めてフライトすべきでしょう。
このやり方、暫定高度が付く SID では他でも有効ですよ。NZE に FL210、
MOTOS に FL240。
千歳 Rwy19の時は、LARCH に FL260。重量が重くて LARCH までに FL260に上昇できないような時は、“UNABLE NEXT ALT ” が表示されないよう、FL260B と入力します。Rwy01の時はアルト・ウインドーに最初から FL260とセットしますので、LARCH への入力は必要ないでしょう。

ところで、PNF が管制承認の書き取りを行っている時、PF が気を利かせてトランスポンダーに4321とセットしているのをよく見かけますが、これは止めるべきですね。中には気を利かせない PF も居ますので、(私もその一人ですが)この辺りがあやふやになってきますと、お互いに相手がセットしてくれた、と思い込んでしまう危険性があります。
通常操作手順に、どちらがセットすべきか明記してないのが一番の問題なのですが、ペデスタル部分はPNF の守備範囲のはず、トランスポンダー・コードは PNF がセットすべきです。

先日の運航検査の時、離陸する飛行機で結構 混雑していたのですが、前にも書きましたように、離陸許可が出た時、滑走路に正対していない飛行機が殆どで、離陸許可が出てから離陸滑走を始めるまでに、かなりの時間を要していました。その事を話題にしましたところ、航空局の試験官も言ってました、「管制官も『◯◯◯の飛行機が特に時間が掛かる』 と、ぼやいていた」 と。迅速に行動する事が肝要ですね。

その迅速な行動で思い出しましたが、以前の管制方式基準にはこんな記述がありました。
『航空機(ジャンボジェット機を除く)に対して離陸時又は地上滑走時において迅速な行動を指示することができる』
ここで言うジャンボジェット機とはB747の事ではなく、最大離陸重量40万ポンド以上の飛行機を指しています。それ故、B747やB777に対しては、苦し紛れ?に “No Delay” などと言い換えて指示していたのですが、最新の基準では(ジャンボジェット機を除く。)の部分が削除されています。
と言う事は、“Immediate” “Expedite” などの用語で迅速な行動を指示される場合があり得る事になります。


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NO NAME

初めてコメントします。昨年、6月16日の日記を読んだ時も同じことを思ったのですが、例えばFUKの3タミから出発して16から離陸する場合、タクシー距離がとても短いので、ドアクローズすると直ぐにセーフティービデオを上映しないといけないと思うのですが、、、ビデオ上映が遅れて、ゆっくりタクシーして時間を調整している便に乗ることがあります。同じような例は、ITMの32Rなどでも経験することがあります。悪貨は良貨を...の例の一つなのかな、と思います。
by NO NAME (2008-02-07 00:45) 

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