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Rudder Trim Technique [航空関係]

皆さんもご存じのように、飛行機にはエルロン、エレベータ、ラダーの三舵が装備されており、それぞれにはトリムと呼ばれる釣り合い装置が備えられています。
三舵のトリムのうち、最も頻繁に使うのがエレベータ・トリム(スタビライザー・トリム)でして、飛行機の速度の増減などを行った後には、エレベータ・トリムを使ってトリム調整を行わないと、その後の操縦が困難になる場合もあるのです。

飛行機には、速度を増減させますと、機首上げ又は機首下げの姿勢を取って高度を変化させ、現在の速度を維持しようとする特性がありますので、速度を増減させて、なおかつその状態を維持するためには、操縦桿に常に力を加え続けて姿勢の変化を抑える必要があるのですが、それを続けていたのでは疲れてしまいますよね。
そこでトリム調整を行い、操縦桿に力を加えなくても、所望の姿勢と速度を保てるようにしているのです。

よく、「飛行機が失速して墜落した」 などと言いますが、これはとんでもない間違いで、飛行機は失速しないように設計してあるのに、パイロットが余計な力を加えて失速させているのです。
以上余談。

と言う事で、エレベータ・トリムの調整はあらゆるフライト・フェーズにおいて必要になってきますし、オート・パイロットを使用して飛行している時でも、オート・パイロットが自動的にトリム調整を行うようになっています。

では、エルロン・トリムとラダー・トリムはどんな時に調整する必要があるのでしょうか?
飛行中に操縦桿が下の図のように、どちらかへ傾いている場合があるのですが、その場合にはエレベータ・トリムだけでは対応できませんので、エルロン/ラダー・トリムの出番となるのです。

blogcontrolwheel.gif
なぜ操縦桿が傾いてしまうのか?それは、左翼と右翼の揚力・抗力に差が生じているからなのですが・・・・・その訳とは?
これだけ大きな機体を製造する時、完全に左右対称な機体を造るのは至難の業でしょうし、経年変化により機体にゆがみなどが生じた場合でも、左右の翼の揚力・抗力に差が生じてしまいます。
そのアンバランスをオート・パイロットがエルロンを使って修正しようとしますので、上の図のように操縦桿が傾いてしまうのです。
blog747-400rearview.gif
この状態を後方から見てみますと、上の図のように左のエルロンを下げ、右のエルロンは上げる事により、左右の翼の揚力を一致させて、機体が傾かないようにしているのです。

巡航中などの高速時には、翼端近くにあるアウトボード・エルロンはロックされていますので、作動するのは内側にあるインボード・エルロンだけです。
操縦桿をある程度以上傾けますと、スポイラーも立ち上がり、揚力を更に減少させます。

blogadislip.jpg

このアンバランスな状態の時には、機体も僅かに横滑りしている場合が多いので、PFDのスリップ・インディケータ(在来機のボールに相当)ものように、操縦桿が傾いている側へ僅かにずれている場合が多いようです。

エルロンが中立の位置になくて機体が横滑りしているこの状態。当然の事ながら、機体の空気抵抗を増加させますので、環境的・経済的にも好ましい状態ではありません。特に長距離国際線では燃料消費の増大が顕著になります。

では、この好ましくない状態を解消する方法とは?
ボーイングのトレーニング・マニュアルにあります “ Recommended Rudder Trim Technique ” を見てみますと、

・ 左右の推力を均等にセットする。
・ 必要なら、左右のタンクの燃料量を均等にする。
・ オート・パイロットはエンゲージしたまま、HDG SEL または HDG HOLD モードとし、安定するまで30秒間待つ。
・ ラダー・トリムを操縦桿が下がっている方向へ操縦桿が水平になるまで回す。

となっており、トリム調整が終わった後に、「機体の僅かな傾きや僅かな横滑りがあっても許容できる」 としてあります。とにかく、エルロンが中立の位置にないまま飛ぶ事が、最も抵抗を増やし、燃料消費を増大させると言う訳です。
オート・スロットルを使っていますので、推力は均等でしょうし、燃料の偏りも殆ど考えられません。
また、余程の風の変化がない限り、LNAV モードのままで調整を行っても問題ないでしょうから、私はいつもLNAV モードのままで調整しておりますし、SPI(Surface Position Indcation)も参考にします。

また、“Recommended ・・・・・” には、速度や高度、機体重量の変化に伴い、再度のトリム調整が必要となる。としてありますが、当然の事ですよね。
私の経験では、離陸して速度が増加して行くに連れ、ラダー・トリムを右に回して行き、逆に降下・着陸の段階になりますと、右に回していたトリムを戻して行く必要があるようです。

エルロンの修正なら、何故エルロン・トリムを使わないのか?との疑問が当然出ると思うのですが、エルロントリムを使っても、エルロンが中立の位置に戻る訳ではなく、操縦桿が中立の位置に戻るだけで、エルロンそのものは作動した状態のままなので、使う意味がないのです。
なお、『オート・パイロットをエンゲージした状態でエルロン・トリムを使用してはならない』 との運用制限がありますので、ご注意を。



アジア欧州首脳会議(ASEM)での日中首脳会談の実現。民主党政権が中国へのラブコールを送り続けた結果、やっとお会い頂けたと言うのが実情だったようですが、首脳会談などとは名ばかりの、ほんの立ち話程度の接触だったようですね。

しかし、それはどうでもいいのです。
菅総理が中国の首脳との会談で、丁々発止のやり取りを行えるだけの能力を持っているのであれば、おおいに結構な事なのですが、中国首相に向かって、「尖閣諸島は日本の固有の領土である、それを認めろ!」 と迫るだけの度胸があるようには見えません。あのうつむき加減でボソボソと話す自信のない態度からは。
この市民運動家出身の菅総理の限界は見え見えで、中国に言いくるめられて会談が終わってしまうのは火を見るより明らかでしたからね。

事実、「現在の状況は日中両国にとって好ましい状態ではない」 との見解が示されて一件落着となったようですが、日本にとっては中国の主張を一部認めたような形になってしまったとしか言いようがない首脳会談でした。

一方の中国、好ましい状態ではないどころか、思惑通りの展開になったと、ほくそ笑んでいる事でしょう。
尖閣の領有権が不明確なまま、取りあえず先送りが出来ましたからね。
元米国高官が、「中国は日本を試している」 との見解を示していましたが、中国から見れば、十分な成果を上げた小競り合いだった事でしょう。

それを我が総理は、「日中間の戦略的互恵関係が構築できた」 などと、ノー天気なコメントを残していますが、これが本心から出た言葉だとしますと、悲しいかな、救いがたい総理大臣殿であります。

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星好夜

FDさん、こんばんは。

太平洋戦の直後かもしれませんが、アメリカには頭がいい人がいたようです。アメリカにとって将来「日本、中国、韓国」が一枚岩になってしまったらアメリカは敵わない、アメリカこそ世界のナンバー1であるべき。よって、この三国が一枚岩にならないよう未来永劫に渡って、いざこざを起こす火種を残しておいたと思っています。☆彡
by 星好夜 (2010-10-05 23:15) 

納豆

拝啓 FD様

10/6の衆議院本会議、総理に対する稲田議員の質問は、今、日本国民が、国家(政府)に対して憂慮している(すべき)重要な事柄を多々含んでおり、その答弁とともに大変興味深い、記録に残しておくべき価値のあるものでした。是非ご覧くださいませ。

敬具

by 納豆 (2010-10-07 01:02) 

トメ

FDさんこんにちは。

内田幹樹さん著「査察機長」にあるくだりで、ラダーはオートパイロットとリンクしていないと読める箇所があります。
以前から不思議だったのですが、オートパイロットによる旋回の際にラダーを使用しないで旋回しているということでしょうか?(トリムを手動で調整するということからも勝手に想像しました)
ということは、ラダーを使用しないでも綺麗に旋回できる?

那覇の帰り、最後(かもしれない)のVOR-Cアプローチを体験できました!
-400の羽田カーブはいつも豪快ですね~。FDさんが操縦しているのかな~?と考えるのもまた楽しいことです。
(行きはお花ジャンボだったし、帰りはVOR-C。ラッキーでした。)

尖閣諸島に近い離島にお住まいの方々とお話しましたが、中国に対する不安は間違いなくあるようです。
「海自艦船が周辺海域で待機するか、海自による国境警備を行って欲しい」という気持ちをお持ちのようです。
日本国民である沖縄離島にお住まいの方々の気持ちも考えて、我が国の領土領海に関する主張はきちんと発信していただきたいものです。
中国がレアアースの対日輸出を制限するなら、その事実を国際社会にアピールして国際社会からの制裁を受けるように仕向けるくらいのことが出来ないものでしょうか。
弱腰…

日本の先端技術により作られるモーターなどの製造が止まれば、被害をこうむるのは中国を含む国際社会全体なのですから!
by トメ (2010-10-07 19:03) 

FD

ラダーを踏んでやると飛行機は旋回すると思っている方も多い事でしょうが、ラダーだけでは飛行機は殆ど旋回しません。
一方、エルロンを使って飛行機をバンクさせてやりますと、飛行機を旋回させる事が出来ます。
だだし、調和の取れた旋回を行うためには、やはりラダーも使ってやる必要があります。
調和の取れた旋回とは、極端な事を言いますと、機内に立てた鉛筆が倒れないような重力が真下に掛かる旋回を言います。
エルロンだけを使った旋回ですと、飛行機は外滑りとなってしまいますので、鉛筆は内側へ倒れる事になります。

通常、オート・パイロットはラダーをコントロールしませんので、エルロンだけを使った旋回を行います。
そこで私は、離陸後大きく旋回する時などには、ラダーを踏んでやって、オート・パイロットの操縦を助けています。こうする事により、調和の取れた旋回が行えるのと同時に、旋回半径を小さくする事が出来るのです。

通常、オート・パイロットはラダーをコントロールしないと書きましたが、ILSアプローチで対地1500フィート以下になりますと、オート・パイロットはマルチチャンネル・オペレーションとなり、ラダーもコントロールするようになります。
そのため、片側2発のエンジンが停止いている場合でも、オート・ランドを行う事が出来るのです。
-400には3基のオート・パイロットが装備されていますが、通常は1基のみが作動しており、残りの2基はスタンバイ状態になっています。

by FD (2010-10-08 09:10) 

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