背後から忍び寄る影? [航空関係]
この時期は偏西風(ジェット・ストリーム)が強くなって行く季節でして、1万メートルの上空では150ノット(時速280キロ)の西風が吹く事も珍しくありません。
今日は羽田→福岡のフライト。ほとんど真西に向かってのフライトとなりますので、偏西風が横方向からとなる千歳便などと比べ、偏西風の影響を強く受ける路線でもあるのです。
羽田の新しい滑走路05を離陸し、SEKID RNAV デパーチャーで上昇を続けていますと、機首正面からの風が徐々に強くなって来ました。
こんな時、FMS が計算する最も経済的な上昇速度であるエコノミー・クライム・スピードで上昇してしまいますと、運用上の制限速度である VMO/MMO (365ノット/Mach.92)に非常に近い速度となっていますので、急激な偏西風の増加に遭遇しますと、オート・パイロットの追従が間に合わず、制限速度をオーバーしてしまう可能性も考えられます。
そこで、スピード・インターベンションを行って320ノットまで減速し、十分な速度の余裕を持たせて上昇する事にしたのでした。
今日の巡航高度は FL340。
通常ですと、FL380や FL400の方が燃料消費の少ない経済的な巡航高度となるのですが、今日のように高々度での偏西風が強い時は、偏西風の弱い低高度を選択した方が経済的な巡航高度となる場合もあるのです。
上昇を続けていますと、我々の後から離陸した同じ福岡行きの便が、東京コントロールとの最初の交信で、FL280に向け上昇中であると報告している交信が聞こえてきました。
FL280で巡航しますと、燃料消費は増えてしまうのですが、向かい風が弱いので、飛行時間は短縮されるのです。経済性より定時性を重視したと言う事なのでしょうが、ひょっとすると別の狙いがあったのかもしれません。
『う~ん、これはまずい状況になるかも』 との考えがよぎりましたので、FL280を通過する時の偏西風の強さと、その時の対地速度をチェックしてみましたところ、NDには風速90ノット、対地速度405ノットと表示されていました。
そして、巡航高度である FL340に到達してみますと、風速135ノット、対地速度365ノットと表示されているではありませんか!対地速度が40ノットも違うと言う事は、1時間飛べば40NM の差が出てしまう事になります。
そのまま、FL340での巡航を続けていたのですが、同じ管制セクターに入って来たその福岡行きの便と管制との交信を聞いていますと、いつの間にか、FL260まで降下をしていたのでした。
同じ東京コントロールの管制下にあっても、管制するセクターが違っていますと、他機の交信を聞く事が出来ませんからね。
『更に向かい風の弱い FL260まで降下したか・・・・・いよいよまずい状況になってきたぞ』このままの状況が続けば、福岡空港へ向け降下を開始するまでに追い越されてしまう可能性も出て来ました。
羽田での出発が10分近くも遅れていましたので、福岡に定刻に到着するためには、ここで抜かれる訳には行かないのです。
到着が遅れれば、乗客の皆さんがタクシーを拾うのに、苦労するかもしれませんので。
そこで会社無線を通じ、FL300以下の高度での揺れの情報を入手しましたところ、FL260も FL280も揺れはないとの事でしたので、FL280までの降下を東京コントロールに要求し、許可されました。
FL340で巡航を続けて燃料を節約したとしても、福岡での進入が後回しにされてしまえば、かえって燃料消費が増える結果となってしまいますからね。
シルバー乗員の場合、早着して勤務終了時刻が早まる事は、あまり喜ばしい事ではないのですが。
-400の TCAS は上下方向2700フィートまでのターゲットしか表示しませんので、
FL340で飛んでいたのでは、背後から忍び寄る影があっても、完全に追い越されて相手が前方に出てくるまでそれに気付かず、不意打ちを食らう結果となってしまいます。
FL280へ向け降下を続けていますと、相手機のターゲットが TCAS に表示されるようになって来ましたが・・・・・何と、我々の後ろ7マイルまで接近していたではありませんか!
10分もすれば追い付かれてしまう距離でしたね~危ない危ない。
今日は羽田→福岡のフライト。ほとんど真西に向かってのフライトとなりますので、偏西風が横方向からとなる千歳便などと比べ、偏西風の影響を強く受ける路線でもあるのです。
羽田の新しい滑走路05を離陸し、SEKID RNAV デパーチャーで上昇を続けていますと、機首正面からの風が徐々に強くなって来ました。
こんな時、FMS が計算する最も経済的な上昇速度であるエコノミー・クライム・スピードで上昇してしまいますと、運用上の制限速度である VMO/MMO (365ノット/Mach.92)に非常に近い速度となっていますので、急激な偏西風の増加に遭遇しますと、オート・パイロットの追従が間に合わず、制限速度をオーバーしてしまう可能性も考えられます。
そこで、スピード・インターベンションを行って320ノットまで減速し、十分な速度の余裕を持たせて上昇する事にしたのでした。
今日の巡航高度は FL340。
通常ですと、FL380や FL400の方が燃料消費の少ない経済的な巡航高度となるのですが、今日のように高々度での偏西風が強い時は、偏西風の弱い低高度を選択した方が経済的な巡航高度となる場合もあるのです。
上昇を続けていますと、我々の後から離陸した同じ福岡行きの便が、東京コントロールとの最初の交信で、FL280に向け上昇中であると報告している交信が聞こえてきました。
FL280で巡航しますと、燃料消費は増えてしまうのですが、向かい風が弱いので、飛行時間は短縮されるのです。経済性より定時性を重視したと言う事なのでしょうが、ひょっとすると別の狙いがあったのかもしれません。
『う~ん、これはまずい状況になるかも』 との考えがよぎりましたので、FL280を通過する時の偏西風の強さと、その時の対地速度をチェックしてみましたところ、NDには風速90ノット、対地速度405ノットと表示されていました。
そして、巡航高度である FL340に到達してみますと、風速135ノット、対地速度365ノットと表示されているではありませんか!対地速度が40ノットも違うと言う事は、1時間飛べば40NM の差が出てしまう事になります。
そのまま、FL340での巡航を続けていたのですが、同じ管制セクターに入って来たその福岡行きの便と管制との交信を聞いていますと、いつの間にか、FL260まで降下をしていたのでした。
同じ東京コントロールの管制下にあっても、管制するセクターが違っていますと、他機の交信を聞く事が出来ませんからね。
『更に向かい風の弱い FL260まで降下したか・・・・・いよいよまずい状況になってきたぞ』このままの状況が続けば、福岡空港へ向け降下を開始するまでに追い越されてしまう可能性も出て来ました。
羽田での出発が10分近くも遅れていましたので、福岡に定刻に到着するためには、ここで抜かれる訳には行かないのです。
到着が遅れれば、乗客の皆さんがタクシーを拾うのに、苦労するかもしれませんので。
そこで会社無線を通じ、FL300以下の高度での揺れの情報を入手しましたところ、FL260も FL280も揺れはないとの事でしたので、FL280までの降下を東京コントロールに要求し、許可されました。
FL340で巡航を続けて燃料を節約したとしても、福岡での進入が後回しにされてしまえば、かえって燃料消費が増える結果となってしまいますからね。
シルバー乗員の場合、早着して勤務終了時刻が早まる事は、あまり喜ばしい事ではないのですが。
-400の TCAS は上下方向2700フィートまでのターゲットしか表示しませんので、
FL340で飛んでいたのでは、背後から忍び寄る影があっても、完全に追い越されて相手が前方に出てくるまでそれに気付かず、不意打ちを食らう結果となってしまいます。
FL280へ向け降下を続けていますと、相手機のターゲットが TCAS に表示されるようになって来ましたが・・・・・何と、我々の後ろ7マイルまで接近していたではありませんか!
10分もすれば追い付かれてしまう距離でしたね~危ない危ない。
FDさんこんにちは。
お疲れ様でした。
ビールがおいしくなくなってしまったのは残念でしたが、後ろに忍び寄る影を事前に察知して先手を打てたではないですか!
低い高度を選択するメリットもあるのですね。
ところで、那覇便は、高度によっては焼津を通らないルートに変更されたようですが、焼津上空を通過していた以前のルートに比較して短縮となったのでしょうか?
また、このように「風の状況で高度を変える」場合にはどうなるのでしょう?
by トメ (2010-11-19 19:27)
4本目の滑走路がオープンして以降、羽田の出発・到着経路が大幅に変更されましたので、那覇便が使用する出発経路も、JYOGA RNAVデパーチャーとなり、高度に関係なく焼津上空は通過しなくなりました。
以前よりも内陸寄り(北寄り)のルートとなっておりまして、
JYOGA-SENNA-NUMAR-TOHME-HANTO-NADAR-MAYON-
等のポイント通過します。
以前に比べますと少し遠回りになるようですが、西から羽田へ向かう飛行機との間隔を拡げる事を重視した結果ではないでしょうか。
by FD (2010-11-19 21:46)
FDさん、おつかれさまでした。
背後から忍び寄る影。。同じ会社内でも、
競争しているところがありますので、仕方ありませんね^^
このご時世、1時間でもDLYしようものなら、リストラされそうですよね。
FUKのAPRでは、事前にG/S
情報は得られなかったのでしょうか?
(カンパニー、ATISなど・・。)
by てんてん (2010-11-20 08:40)
2009年12月18日 『ここでも VNAV』 を読んでいただきますと、詳しい事がお分かりになると思いますが、G/Sの電波が乱れるのは、国際線ターミナルからの出発機が
G/Sアンテナの前を横切る数分間の出来事ですので、事前に情報を把握する方法はなく、G/Pホールド・ライン通過をコントロールするタワーからの情報だけが頼り。と言う事になります。
by FD (2010-11-20 09:41)
FDさん、レス有難うございます。
了解しました。てっきり、
G/SがUN-SERVICEとなっているのかと思いました。
直進性を有する電磁波ですので、仕方ありませんが、
FUK では情報をもっているでしょうにね・・・。
あと一手間をかける配慮がなされても良いかと思います。
MLSでは周波数帯が異なると聞きましたが、
多少のLOSSがあっても、FDがふれるような事は
無いのでしょうかね?
ただ、FDが急激にFLUXする?というのは、設計上如何なものかと
思います。特にAP使用時には、急激な信号の変化に対して
ワザと反応を鈍くして、急激な姿勢の変化を防ぐようだったような?!
SQだったりして・・・。
by てんてん (2010-11-20 12:38)
こんにちは。いつも拝見させております。
某ATCです。
ATCとしてもBAD WX時はGS protection経路を指示しておりますが、そうでない場合は主にLCL管制官の判断でGP hold lineをcrossさせています。
※管制業務処理規定Ⅲ-(Ⅲ)4(4)(c)にてWX条件が雲底800ft未満、地上視程3,200m未満と定められていますが、実際の運用ではもっと大きなバッファを取っております。(その数値の2倍程度)
B-TWYからの出発機がNo1の場合、READYを通報してきた時点でcrossさせます。No2以降の場合、到着機がTHR通過時に遅滞無くline-up出来るようにcrossさせます。
もちろん、到着機への情報は怠る事はありませんが、その時期については個々の到着機の位置を考慮するのはかなり難しいです。
特に、TFCが集中する11時台は顕著だと思います。(一方送信で対応する場合が多いと思います)
APP管制下の時点で通報するのも一つの手だとは思いますが、現在の機器の古さから、その情報を管制官同士の伝達で行うしか他無く、人員の足りていない現状況では完璧と言えません。
また、SANDYよりも手前、LLZにjoinする前にTWRにコンタクトさせるのも良いのですが、あの辺りはよくVFRが通過するため、Radar serviceを提供するために、なかなかhand offしづらい場合もあります。
色々な方法を組み合わせて、出来るだけ早期にGS not protect情報を伝えなければならないと同時に、それが航空機に及ぼす影響も熟知する必要があるでしょう。管制官はauto-pirotのmodeについてはほとんど無知ですし、規定だけ読んで仕事していても、解らないですから・・・
これからもブログの記事楽しみにしておりますm( _ _ )m
by GSゆれゆれ (2010-11-20 18:51)
詳しいご説明ありがとうございます。管制の方のご苦労もよく理解できました。
前にも書いた事なのですが、グライド・スロープをキャプチャーさせなくても、VNAVを使えば、グライド・スロープと遜色ないバーティカル・ガイダンスを得る事が出来ますので、
not protect の可能性があるとの情報だけでも通報して頂ければ助かると思います。
視程が良好でOMまでに滑走路が視認できる気象条件の時は、VNAVで降下を開始し(あくまでもビジュアル・メインテインですが)、着陸許可が出たところでグライド・スロープをキャプチャーさせればと考えております。
by FD (2010-11-20 19:49)
実際にnot protectの状態になる前に情報伝達する必要がありそうですね。
その前にGS protectされている状態で着陸する先行到着機がいる事を考えると、後続機に対しては”EXPECT GS SIGNAL NOT PROTECTED”が適切ですかね。
ありがとうございます。参考になりました。
by GSゆれゆれ (2010-11-21 07:37)
“EXPECT ・・・・・ ” と通報していただければ、大変助かると思います。
有意義なお話が出来ました事に感謝いたします。
by FD (2010-11-21 09:52)