SSブログ

配慮を無にしない運航 [航空関係]

羽田に新しい RNAV アライバルが設定されてから4ヶ月、効率の悪いアライバルである事は変わっていないのですが、少しでも効率のよいアライバルになるような配慮が、管制側でなされているように感じられます。
例えば STONE の通過速度と高度は、250 ノット / 11,000 フィートと規定されているのですが、東京アプローチにコンタクトしますと、250 ノットの速度制限が解除されるのが殆どのようです。
更に STONE 以降、11,000 フィートからの降下開始時期も、4,000 フィートまでの降下をアイドル・スラストで行えるよう、CURRY 付近まで遅らせる配慮がなされていますし、
“ at Pilots Discretion ” を付加して、降下の時期をパイロットの判断に任せられるような管制指示になっています。
blogcreamarriva3l.gif
となりますと、我々パイロット側としましても、それに対応した速度と高度の処理を行う事が必要となって来るでしょう。

STONE での速度制限が解除される可能性が高くなれば、STONE / 11,000 フィートに対応するT/Dからの降下は、VNAV PTH モードで行うのが、この場合には最適な降下モードの選択となります。
VNAV PTH モードでは、FMS が計算した降下パスをキープする事が優先されますので、STONE を間違いなく 11,000 フィートで通過するよう、機体をコントロールしてくれますので。
ただし、上空の風が FMS が予想した風向風速と大きく異なっているような場合には、計算された降下速度とかけ離れた速度となってしまう場合もあるのですが、STONE の通過速度が解除される事を考慮すれば、何ら不都合はないでしょう。
「解除されなかったら?」 ですって。その場合は最後の最後にスピード・ブレーキを使って 250 ノットに減速してやればよいのです。


命をかける時は自分の道具を全て役立させたい。
武士は携えている二本の刀を使い切らず、
腰におさめたまま死ぬのは不本意だ。あああ宮本武蔵 『五輪の書』 より。

nice!(1)  コメント(9)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 9

kingair350

FDさんこんばんは、いつも大変興味深く読ませてもらっています
いつも記事の更新を楽しみにしています

FMSのモードでVNAV SPDモードもありますがこれをAPPの最終段階滑走路が見える直前まで使えたらいいのですけどね。。

FDさんに質問させて頂きたいのですが、実機のB744の操縦桿のところにはピッチトリムの調整ができるスイッチがあるのですよね??
それを使ってファイナルからマニュアル操縦で飛ばすときは適切な力が操縦桿にかかるように調節ができるものと理解しています

そうですよね? あとピッチトリムとエレベータートリムって同じ意味でしたでしょうか?? なんか基本的なところを自分は分かっていないようで困っています。でもスタビライザートリムってのもありますけどそれは電子トリムの事でしょうか?? それぞれどう違いがあるのか分かっていません
もしかして過去記事にありましたでしょうか? ちょっと自分でも検索して調べます 
by kingair350 (2011-03-02 19:16) 

トメ

FDさんこんにちは。

北からのアライバルルートが東に張出すようになると、Direct Creamの指示が出るタイミングによっては、レベルオフしないでCreamに届くのでしょうか?
Stone手前で指示が出ないと難しいのでしょうか。

延々、エンジンを吹かしてレベルフライトが続くのは、他の空港では見かけませんよね。
でも、エンジン音が少し大きくなっただけで、しっかりとした加速感を感じられるのも魅力ですが。


by トメ (2011-03-03 10:17) 

酔っ払いライダー愛読者

いつも勉強させていただいてます。本当にありがとうございます。
まだまだ、アイドルディセントの重要性の認識は日本の管制官に浸透していません。くだらないショートカットのサービス精神は昔から根付いているのですが...
到着機の効率性、美徳とされる管制処理
1.綺麗に等間隔(最低移管間隔)に並べること。それは、面積が定まった空域にムラなく収める事で、より多くの航空機を処理できるという発想です。綺麗に並べやすくするなら、降下状態では後ろの高い位置にいる航空機が、低い位置にいる航空機への追いつき(対地速度)具合を抑えることです。そうすると、ヘディングの角度もきつくならず、戻すタイミングがとりやすくなります。結果、最低(移管)間隔により近くする可能性が高まります。
2.できるだけ空域を使用しない。自分の管轄空域内で収まるよう処理をすること。(これは、空域特性個別の問題もありますが・・・)
しかし、羽田、成田、軍が使用する空域が隣接している以上、出発・到着の処理を一元的に管理するには制約が多すぎます。交通量が多い地域ほど、管制官の手持ち機数能力には限界があるため担当エリアが細かく区切られ、複数に分割されている空域ほど一元的な管制処理は困難になります。分割されれば分割されるほど、それぞれの境界線で決まりごと(移管条件)が多くなり、航空機に課せられる制限が多くなります。(一方のレーダーには映っているが、他方のレーダーには映っていない関連機が存在するためです。一機一機について個別に隣接している空域担当と調整をするには限界があります。)

RNAVルートの新設・改正は(FPL上の搭載燃料を少なくできるといったメリットに限定されると考えてますが)、単に、管制処理と軍事空域等を考慮の上での経路短縮のみの概念です。継続上昇、効率的なパスでの継続降下を考えた場合、経路設定の根本的な概念が犠牲となり経路長も長くなる区間もでるでしょう。また、管制のレーダー誘導等の処理、工夫が必要となり、それぞれに設定された空域境界線の移管条件の緩和、本来入域しない予定の空域にも調整が必要となるケースもでてきます。また、CDAを実施した場合、距離に換算した到着機相互間の間隔も若干拡大したり、それを羽田到着機20機分の列に当てはめるとかなりのレーダー誘導量になり、到着機をムラなく綺麗に並べるといった誤差は大きくなるでしょう。
そして、なんと言ってもジェット気流が猛烈に吹き気流が悪い日本上空の場合、降下パスがあまりにも個別にバラつきがあり、巡航高度もバラつきがあります。その分GSもバラつきが大きく、綺麗に等間隔が美徳とされる到着機のスペーシングは現在でも難易度が高いです。

今と昔の羽田到着機の処理を比べますと、昔もエンルートで心苦しながらベクターしていましたが、進入管制区内での低高度における凄まじい蛇行ができなくなった分、しわ寄せが太平洋の海へ来ています。言い方が、ベクターホールドという方がよろしいかと感じるのですが・・・
また、いろいろご指導のほどよろしくお願いします。
by 酔っ払いライダー愛読者 (2011-03-03 14:25) 

GSゆれゆれ

いつも楽しく拝見させております。

先の方が書かれた事は正しいと思います。
今の管制システム、組織、予算では航空機個別の完全に近い効率的な運航は難しいく、おそらく4次元トラジェクトリ予測をベースとした次世代管制システムになるまで、今のような効率的ではない運用になるのではないでしょうか。
しかし、個々の管制官は素晴らしい業務をこなしているとは思いませんか?等間隔のベクター、ショートカットなど管制官の努力は決して自己満足なんかではありません。それで少ない人員で処理機数増やせるのですから。それともスロット減らしてみんなに最高に効率的な運航させますか?
今の問題は管制官個々に不満持っても仕方ないですよ。
確かに、tailored arrival、profile descentなんて理解していない人もいますけどっ。管制官はもっと勉強しないとね〜・・・


ATMCのflow controlが早めに終わる事が多いのは管制官の努力だと、制御が日本一かかる空港でひしひしと感じております(特にJTT-S,T09)。(ATMCのシステムもあれですが・・・)


酔っぱらいながら書いてたらこんな文章になっちゃいました。。
すみません。

by GSゆれゆれ (2011-03-03 23:19) 

FD

ピッチ・トリムもエレベータ・トリムも同じ物ですね。
そして、大型旅客機のように水平尾翼全体を動かしてトリムを取るのを
スタビライザー・トリムと言っているようです。

>レベルオフしないでCreamに届くのでしょうか?
申し訳ありませんが、この意味がよく分かりません。
何フィートにレベルオフしないのか?

管制の方だと思いますが、貴重なご意見ありがとうございました。
少し分かってきました事は。
パイロットには横方向の自由度がありませんので(アライバル・ルートやレーダー誘導
による制限により)どちらかと言いますと、誘導に対応した高度処理に重きを置くの
ですが、管制側は最低管制間隔に飛行機を並べる事に重きを置き、高度処理は
二次的。と考えよいのでしょうか?

また、「パイロットは好き勝手な速度で降下をしている」には同感です。
VNAVパス・モードで降下を行うようにすれば、ある程度統制の取れた降下パスになる
と考えているのですが。

「しわ寄せが太平洋上に」 なる程、そんな訳でしたか。
東京アプローチでのワイド・ベクターは殆どなくなったのですが(着陸に二本の滑走路
が使える事もあるでしょうが)、遠州灘上空では左右に振り回される事が多くなった
ように感じておりました。
左右に振り回しておきながら、東京アプローチに移管された途端のショート・カット。
コックピットの中では「何なんだよ!」と不満を言っていたのですが、狭い空域での
ご苦労がよく理解できました。

私が主張していますように、FMSを有効に活用した運航を行えば、次世代管制
システムに近い運用が出来るのではないかと考えております。

しかしパイロットの皆さんは一国一城の主で職人気質。
好き勝手な速度と降下パスで飛ぶのがお好きなようで。

by FD (2011-03-04 16:18) 

トメ

FDさんこんにちは。

どうも言葉の使い方が間違っているようですね。すいません…
水平飛行をしないで、アイドルディセントでCREAMまで到達できないものか?と思いました。

管制官サイドとパイロットサイドで考え方や、守るべきポイントに差異があるのですね。
でも、FDさんがおっしゃるようにどの機体も降下のパスを一定にできると、降下後の管制間隔にもある程度の目途をつけられそうですね。
4次元ですか…、いずれ、FMSに自機が飛ぶべき位置を管制からの信号で表示されるようになりそうですね。
by トメ (2011-03-05 11:27) 

FD

CREAMからCURRYに延びる緑の線を上方に延ばして行きますと、
CREAMにアイドル・ディセントで到達するための降下開始点が分かると思います。
降下開始点の遙か手前からアイドルで降下を開始して、CREAMまでレベル・オフ
する事なくで到達できるか?とのご質問であれば、不可能です。
降下スピードに関係なく、アイドル・ディセントでの降下角度はほぼ一定(概ね3度)ですので。

by FD (2011-03-06 21:56) 

たけちゃ

皆様の貴重な投稿をいつも参考にさせていただいています。
昨年の羽田拡張以降、遠州灘上空で迂回することの意味、よく理解できました。ところでこのエリアで速度調整をされたのちに、管制間隔が設定できたのでしょう、Direct ADDUM等の指示がきて、速度調整の終了が管制官から告げられた場合には、管制官はどのような速度で運航することを期待しているのでしょうか? その速度を維持? 元の速度に戻す?もっと増速する? ?????

一国一城の主が好き勝手な速度でとの件について
副操縦士に運航を任せていた際に、降下中に好き勝手な速度でやっていましたので、どのような理由でその速度を選択しているのか聞いてみたところ、運航機種はB737ですが、小型機は速度が遅いので大型機に後れを取らないように300ktでとの返答でした。先入観で固まっていましたので到着後、事務所でB767 B777 B747-400 A320の計画上の降下速度を調べさせたところ、いずれの機種も280kt~290ktの間に速度が設定されていました。巡航速度は機種ごとに違いますがいったん降下になると大きな違いはありませんでした。FDさんの言うように一国一城の皆さんがVNAV PATHをメインにして運航すればある程度は管制官のロード軽減に貢献、かつ効率的な運航に寄与できるのではと考えます。それから慣れるとVNAV PATH MODEが一番楽ちんです。
by たけちゃ (2011-03-07 08:50) 

FD

VNAV PATH MODEへの深い理解、同志を得たようで心強い限りです。
VNAV PATHを使いこなしますと、こんな便利なモードはないのですが、
そこへ行き着く前に苦手意識が先行してしまい、FLCHなどへ逃げてしまうんですよね。

by FD (2011-03-09 08:57) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0