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ハイスピード・ディセント [航空関係]

先日の沖縄便、午後6時を過ぎていましたので、離島便のフライトも終わってしまっていたのか、離着陸機による混雑もなかったようで、沖縄アプローチからこんな指示が来ました。
“ High Speed Descent Approve ”
その時の速度は300ノットでしたので、その速度を保ったまま2千フィートまで降下し、水平飛行に移ったところで減速を開始、フラップをポン、ポン、ポンと下ろしてランウェイ36への ILS アプローチを開始しました。(5千フィート以下での、最大速度と最大降下率の制限には留意する必要があります)

フライトが終わった後のコーパイさんとのディスカッション。
「キャプテン、AIM-Japan には『管制官の速度調整より速度制限の方が優先する』 と書いてありますので、1万フィートで250ノットに減速する必要があったんじゃないですか?」

「1万フィートで減速する必要があったんなら、管制官の意図はいったい何だったんだ?意味のない管制指示という事にならないか?」

「確かにそうですが・・・・・」

はっきり言って、AIM-J の記述には一貫性がないし、根拠が不明な点が多すぎます。あくまでも AIM-J の編集に携わった一部の人の意見であると考えた方がよいでしょうね。

「AIM-Japan を読んでおしまいではなく、航空法も読んどいてね」 と言っておきましたが。


コメント(5) 
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コメント 5

FD

テスト
by FD (2007-11-07 19:57) 

通りすがりの管制官

いつも楽しく拝見しております。通りすがりの管制官です。
コメント欄ができて早々に書き込むのは恐縮なのですが、意を決して書き込ませていただきます。

ご存じのように、速度制限を規定している航空法施行規則第179条第2項には、
「航空法第82条の2第2号の空域(進入管制区という意味です)を飛行する航空機にあっては、指示対気速度250ノット。」
と書いてあります。

実は、”航空法第82条の2第2号の空域”という部分がくせ者なのです。

その航空法第82条の2第2号には、
「第96条第3項第4号に規定する進入管制区のうち・・・国土交通大臣が告示で指定する空域」
と書いてあります。

さらに、航空法第96条第3項第4号には、
「・・・航空交通管制区のうち国土交通大臣が告示で指定する空域(以下「進入管制区」という。)に・・・」
と書いてあります。

そう、沖縄アプローチが管轄している空域は、国土交通大臣が告示で指定していません。
松山空港の進入管制業務を行っている、岩国アプローチの管轄空域も同様です。

航空法施行規則の速度制限は、あくまでも告示で指定されている空域が対象となるので、沖縄&岩国アプローチの管轄空域内では、250ノット以下の速度制限が適用されないと解釈できます。

ということは、この2つのアプローチが管轄する空域内の管制方式については、AIM-Jをベースに考えても答えはでません。

そのコパイさんには、航空法、航空法施行規則、国土交通省告示を読んでいただけると、スッキリ解決するのかなぁ~と思います。

それにしても、日本の法令の堅苦しさと面倒くささには、辟易してしまいます。
by 通りすがりの管制官 (2007-11-09 10:10) 

FD

早速のコメント、ありがとうございます。
私が一番疑問に思っている事は、AIM-JAPAN 603.Cにある、「通常管制官が上記a.の速度を超える速度を指示することはない」 と言う記述なのです。
管制内部で、この内容の通達があるのでしょうか?私はこの記述の根拠に疑問を持っている訳です。我々はAIM-JAPANに従ってフライトしているのではなく、航空法に従ってフライトしていますので。
これからも航空の安全を担う者同士、忌憚のない意見交換を期待しております。
by FD (2007-11-10 18:04) 

通りすがりの管制官

不躾な書き込みにもかかわらず、暖かいお言葉ありがとうございます。
FDさんの疑問へ、お返事させていただきます。
誤解を招かないよう全文を掲載し、要約も付けますので、長文になることをお許しください。

AIM-J 603にある記述の根拠は、管制方式基準の”速度調整”という項目に記載されています。

「法第82条の2第1号及び第2号に掲げる空域においては、(I)2(20)の指示による場合を除き、則179条第1項及び第2項に掲げる制限速度を超える速度調整は行わないものとする。」

そして、管制方式基準の別ページに記載されている(I)2(20)には、

「航空機が法第82条の2第1号及び第2号に掲げる空域を飛行する場合において、不法妨害、急病人の発生その他やむを得ない事由により速やかに飛行する必要があり、かつ、航空交通の安全上支障がないと認められるときは、管制官は、当該機の要請により則第179条第3項第1号により、同条第1項及び第2項に掲げる速度を超える速度を制限速度として指示することができる。」

とあります。この2つの規定を関連づけて要約すると

”進入管制区10,000FT以下の空域では、航空機が緊急事態等で急いで着陸する必要があり、さらに当該機からハイスピードの要求があった場合は、250ノットを超える速度を指示できる。そうでない場合は、250ノットを超える速度は指示しない。”

となります。

管制官は管制方式基準を基に管制を行いますので、通常運航の航空機に対して250ノットを超える速度を指示することは、管制方式基準に違反した行為となりますし、もちろん訓練課程においてもその旨をしっかり教育されます。

従って、AIM-Jに「通常管制官が・・・指示することはない。」と強い表現で記述することができるわけです。

ついでに、FAAの方式では
http://www.faa.gov/airports_airtraffic/air_traffic/publications/atpubs/Atc/Chp5/atc0507.html
http://a257.g.akamaitech.net/7/257/2422/14mar20010800/edocket.access.gpo.gov/cfr_2001/janqtr/14cfr91.117.htm
となっており、ニュアンス的には限りなく日本の方式に近いような気がします。

沖縄アプローチの管制方式について、FAAの方式がすべてあてはまるかわかりませんが。
by 通りすがりの管制官 (2007-11-11 19:38) 

FD

通りすがりの管制官さん、詳しいご説明ありがとうございました。制限速度と速度調整の関係、納得です。
ただ私が持っております管制方式基準が古い(1988年版)ためか、以下の記述は見あたりませんでした。

「法第82条の2第1号及び第2号に掲げる空域においては、(I)2(20)の指示による場合を除き、則179条第1項及び第2項に掲げる制限速度を超える速度調整は行わないものとする。」
by FD (2007-11-11 22:06) 

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