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阿蘇 外輪山の切り通し [航空関係]

秋田へのフライトで機内誌を読んでいたところ、今月号では阿蘇が特集されていますね。
以前、乗員へのアンケートで、「日本は山がきれいだと思いますか?それとも海がきれいだと思いますか?」 と問われ、「山です!特に大分上空から熊本空港へ向けてアプローチする時の、久住から阿蘇にかけての眺めが最高だと思います」 と答えた記憶があります。

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熊本には、訓練生の時と、教官として単身赴任していた時の合わせて2回、4年程だったでしょうか?
土地にとけ込んで?暮らしておりましたので、当時が懐かしく思い出されます。

車とバイクを熊本まで持ち込んでいましたので、休みの日などは阿蘇周辺の道路を走り回っていました。特に好きだったのが、外輪山である俵山からカルデラ内にある南阿蘇へと抜け、阿蘇山の南側から火口方面へと駆け上がる道路でした。この道路、平日は殆ど車が走っていませんでしたので、ブラームスの弦楽六重奏曲を聴きながら、フラット・シックスにムチを入れれば、まさに至福の時でした。

周囲128キロに及ぶと言われる、世界最大級のカルデラ。実は外輪山の一カ所だけに切れ目があるのです。立野の切り通しですね。
神話によりますと、阿蘇大明神とも言われた健磐龍命(たけいわたつのみこと)が、大きなカルデラ湖となっていた阿蘇の外輪山を足で蹴破って、湖の水を流し出し、作物が実る豊かな土地にしたと言う事らしい。

そして私は、この切り通しに助けられた事があったのですよ!20年程前に熊本で訓練所の教官をしていた時の話ですが。健磐龍命サマサマですね。
その日は、新しく任命された教官要員の訓練飛行を行っていました。少し雲はあったものの、絶好の訓練日和。RWY 25を使ってのタッチ・アンド・ゴー訓練に励んでいた時の事でした。
訓練が始まって2時間ぐらい経った頃でしょうか、空港の西側、有明海から熊本市上空にかけて、何やら怪しげな黒雲が拡がって来たではありませんか!そしてその黒雲は徐々に空港へ向かって進んできているように見えました。

有視界飛行で飛んでいましたので、黒雲が近くの熊本市上空へ近づいて来るまで、その事にはまったく気付かなかったのです。そこでダウン・ウインドを飛びながら考えました、『フル・ストップして、訓練を中止しようか』 と。
しかし、訓練のスケジュールも詰まっている事ですし、『あと1回なら大丈夫だろう』 と考え、タッチ・アンド・ゴーの訓練を続けたのですが、これが大失敗だったのです。
滑走路に接地した後、再び上昇し、ダウン・ウインドで “次はフル・ストップ” との要求をしたところ、“ダウン・ウインドで旋回を続けながら次の指示を待て” と言われたではありませんか!
付近を飛んでいた自衛隊機や、使用事業の軽飛行機が一斉に空港へ戻って来て、着陸の順番待ちが出来てしまったのです。

360度旋回を続けながら、順番を待っている間にも、積乱雲は空港へと急速に近づいて来ます。
ひと回りするたびに東へ逃げ、また東に逃げ、飛行機は吹き寄せられるように、空港東側にある外輪山へと押しやられて行ったのです。
上空は雲に覆われていますので、上へ逃げる事は出来ません。そして、その時の唯一の逃げ場が立野の切り通しだったのです。高圧線がないか、細心の注意をはらいながら外輪山の中、カルデラへと逃げ込みました。

しかし、その先も逃げ場はありません。この後どうする・・・・・
そこで決断しました。有視界飛行ですので雲の中に入る事は航空法違反となります。が、致し方ありません。山が遠い南へと機首を向け、フル・パワーで雲の中へと突入しました。
この方向には航空路はありませんし、一番高い高岳でも1592m(ひごのくに)ですので、5千フィートも上がれば安全な高度になります。

上昇する事 1、2分。スポッと雲の上に出ましたので、空港の方を振り返りますと、恐ろしく巨大な積乱雲が空港上空に拡がっていたのでした。
熊本空港に着陸する事はしばらく不可能でしょう。残りの燃料も少なくなっていましたので、大分空港へと向かい、燃料補給をして天候の回復を待つ事にしたのでした。

積乱雲が発達するのも早かったのですが、衰退するのも早かったようで、帰りの空には抜けるような青空が戻って来ていました。
訓練所に帰りますと、地上スタッフから、「大分なんかへ行ってくれたので、これからの訓練計画が大幅に狂わされましたよ」 と嫌みを言われましたが、それなら気象レーダーを見て、「積乱雲が近づいて来ているので、訓練を中止してくれ」 と、なぜ無線で連絡してくれなかったの。と言いたくなりましたね。

しかし、全ての責任はPICにあります。着陸の飛行機で大混雑する事を予測できなかった事には、大いに反省させられました。
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