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RNAV 運航 [航空関係]

RNAV 運航と位置補正の関係は、規程などが複雑にからみ合っていて、私自身の中でもしっかりと整理されていませんでしたので(FMS が勝手にやってくれてますので、その事を意識する必要がない事もありますが)、もう一度関連を整理してみたいと考えました。
そこで、-400が羽田から千歳へ向け、RNAV による運航を行う場合を例に取り、位置補正の実態?を検証してみる事にしました。

羽田からの出発に使います RNAV1 出発経路は PLUTO パーチャー。
そして、RNAV 1 ルートを飛ぶために必要な測位センサーは、

① DME/DME(日本では、この組み合わせによる位置補正を前提とした経路は設定されない)
② DME/DME/IRU(慣性航法機器)
③ GPS

①または②が必須で、③が追加される事には問題はないが、③単独での RNAV 運航は認められない。となっております。

出発前のプラニングの段階では、
クリティカル DME が運用されている事を確認し、クリティカル DME が運用されていない場合には、
DME GAP が14NM以内である事を確認する。14NMを越える場合には、RNAV1 運航は実施できない。
GPS アプローチを実施する可能性がある場合には、RAIM 予測を実施する。

出発前、-400の FMS に羽田のスポット・ナンバーを打ち込んでやりますと、慣性航法装置は自機の位置を認識するのですが、地上では DME の電波を完全に受信できない事もあり、時間が経つにつれ位置誤差が生じてきます。
そこで離陸滑走開始までに、GPS による位置補正が行われている事を確認する必要があります。
GPS は主たる測位センサーとしては成り立たないのですが、補助的に使用する分には有効な測位センサーと成り得るのです。この辺りの GPS の位置づけが、位置補正を分かりづらくしている要因だと考えているのですが。
もしも、GPS による位置補正が有効でない場合は(主として GPS 非搭載機の場合でしょう)、離陸滑走開始時、TO/GA スイッチを押す事により、滑走路末端への位置補正が行われた事を確認する必要があります。

離陸してしまえば、DME/DME による位置補正が有効に行われるでしょうから、GPS は用なしとなってしまう筈なのですが、実際には GPS による位置補正が優先しますので、引き続き GPS が活躍する事になるのです。
bloggpsupdate2.jpg

ND(Navigation Display )の右下に、GPS による位置補正が行われている事を示すシンボルが表示されています。
VOR Right には CHE(千歳VOR)が自動的にチューニングされていますが、
DME の表示は---となっており、地上ではDME の電波を受信できていない事が分かります。
このように、GPS による位置補正が常に優先されるのですが、ILS アプローチを行っている時だけは、LOC GPS と表示され、ローカライザーと GPS による位置補正に切り替わった事が示されます。
GPS による位置補正が行われず、DME/DME による位置補正のみになった場合には、DD と表示されますが、GPS が装備されて以降、その表示を見た記憶はありません。

GPS を主体とするアプローチは可能なのに、何故エンルートでは GPS を主たるセンサーとして利用できないのか?
その理由は、GPS アプローチに要する時間はせいぜい10分程度なので、RAIM 予測を確実に実行する事ができるのですが、出発・到着経路、エンルートでの飛行は長時間にわたりますので、その全ての時間帯において、RAIM 予測を行う事は不可能に近いからなのです。


羽田から千歳へ向かう RNAV は Y11。羽田を離陸し、FL370 で水平飛行に移りますと、ND 上には 13~14 マイル前方を、我々より2千フィート高い FL390 で千歳へ向かうB737 の TCAS ターゲットが表示されたのでした。
我々も同じFL390 を要求していたのですが、FL370 しか許可されなかったのは、この 737 がいたからのようです。要求した高度が同じ場合には、先行機優先の原則がありますので。
羽田を離陸する時、我々のすぐ前にいた 737 のようですが、管制間隔を取るために、我々とこの 737 の間に伊丹行きの 777 を割り込ませましたので、これだけの間隔になった訳ですが、離陸を遅らせたにもかかわらず、期待したほどの間隔が取れなかったので、高度差を付ける事にしたのでしょう。

この離陸順番の変更は、管制間隔を取るためによく使われる手法でして、北行き-西行き-北行きと、交互に離陸させる場合も多いのです。

この15マイル弱の間隔、相手機が 777 なら十分な間隔のですが、相手が 737 となりますと微妙な間隔となってしまうのです。
降下開始までに中途半端に追い付いてしまいますと、ヘディングを大きく振られて遠回りをさせられる事となり、燃料の無駄遣いになってしまいますので、抜けるのか抜けないのか?その見極めが重要になってきます。

そこで、マック.87まで増速し、接近率をストップ・ウォッチを使って計ってみる事にしたのですが、12.5マイルから10マイルまでの2.5マイルを縮めるのに2分ちょっと掛かりましたので・・・・・残りの10マイルを縮めるのに、約9分程度掛かる事になりますね。
そして、我々の9分後の位置は・・・概ね降下開始地点となるMWE(東北VOR)の手前60マイルの地点である、PEONY ポイント付近となる事が分かりました。
「よし行ける!こうなれば抜くしかない」 と言う訳で、マック.87での巡航を続け、降下開始までに前に出る事が出来たのでした。

申し訳ないのですが、足の遅い飛行機に前をふさがれますと、往生するんですよね。
最初に来た飛行機に優先権がありますので、ちょっとでも先行している飛行機が居ますと、
-400に減速の指示が来るのですが、歩行者に追い付いた自転車のようなもので、減速するのに難儀をしてしまうのです。
足の速い自転車を先に行かせてもらえれば、歩行者も自転車もお互いに相手を邪魔する事はないですよね。
先着優先を守るだけでなく、飛行機の速度も考えた管制をやって頂ければ、効率のよい航空交通管制が出来るでしょうに。

当日の千歳空港は北寄りの風が吹いていましたので、着陸は ILS Rwy 01R となり、到着経路は YOTEI SOUTH NO.2 RNAV アライバルとなります。
南寄りの風ですと、RNAV(GPS)Ryw 19L で、YUNEY SOUTH NO.2 RNAV アライバルとなりますが、両アライバルとも、CHE(千歳VOR)と MKE(鵡川VOR)がクリティカル DME であり、このどちらかの VOR が運用を停止していますと、14NMを越えるDME GAP が生じてしまいますので、RNAV アライバルは使えない事になります。

また、RNAV Rwy 19L 、GPS RAIM 予測を行う必要があり、到着時刻と RAIM 予測の時間帯が重なってしまう場合には、VOR Rwy 19L に切り替える必要があります。

ただ、RAIM 予測の時間帯に到着時刻が重なってしまった場合でも、GPS による位置情報の完全性の監視が出来ないだけであって、GPS の位置情報に誤りがある事を意味している訳ではありません。
また、実際に GPS 信号の完全性の低下が疑われる場合には、FMS は GPS 以外の航法センサーによる位置補正へと自動的に移行しますので、直ちに位置誤差が生じる訳でもありません。

更に、RNAV(GPS)アプローチを行う場合には、RNP (Riquired Navigation Performance)0.3NMを入力する事になっていますので、GPS の位置情報に誤りの可能性がある場合には、“ UNABLE RNP ” のメッセージと警報音により、パイロットに警告するようになっていますので、安全性が損なわれる訳でもありません。

RNAV(GPS)アプローチは航法精度を指定されないRNAV に分類されてはいるものの、
RNP0.3NMを入力するという事は、RNAV0.3の運航であると言っても差し支えないでしょう。


なお、RNAV ルートを構成するウェイ・ポイントには、Fly-over ウェイ・ポイントと Fly-by ウェイ・ポイントの二種類があるのですが、
blogflyoverbywaypoint.gif
左、Fly-over ウェイ・ポイントでは、次のセグメントへ向かうための旋回を、ウェイ・ポイント直上から開始するようになっていますが、右、Fly-by ウェイ・ポイントでは、ウェイ・ポイント手前からリードを取って旋回を開始します。
殆どのウェイ・ポイントは Fly-by ウェイ・ポイントとなっていますが、進入復行を開始するウェイ・ポイントやホールディングのためのウェイ・ポイントは Fly-over ウェイ・ポイントとなっており、チャート上ではウェイ・ポイントを示す星印に丸が追加され、見分ける事が出来るようになっています。

文章で表記する場合は(AIP)、Fly-over ウェイ・ポイントには下線が付されます。
例、SEKID RNAV デパーチャー。
RWY 04 :Climb on heading 042° at or Above 700f t ,then direct to TT 041 turn rightt durect to TT 342 ,then ・・・・・・・・

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kingair350

こんばんは、だんだんと航空機の運航システムも全体的にかなり進化してきていますね・・・・ 最近はもう自分なんかはネットで調べたりしてもついていけなくなってきてしまいました・・・もっともただのオタなわけなんですが・・・ ただ今は航空気象について図書館で本を借りて勉強中です。そこで思いましたが、現在はJAXAとBOEINGが晴天乱気流について共同研究をしているようですがどこまで研究は進んでいるのでしょうね? これも気になっているところです。 自分なんかは乱気流が一番怖いです。
by kingair350 (2010-09-04 01:44) 

ウソはいけません。

トピックと関係無くてすんません。
「中国の航空局がパイロット、管制官から整備士に至るまで取り締まり」らしいです。
http://www.bbc.co.uk/news/business-11200188
本邦航空会社の外人パイロットは大丈夫か?

中国に機材の整備を委託しているようなので心配です。

by ウソはいけません。 (2010-09-06 21:24) 

FD

偽物天国の中国の事ですから、中国の航空会社が飛ばしているボーイング機やエアバス機は偽ブランド品だったりして?

まっ、我が国でも戦前の飛行時間に関しては、結構いい加減だったと聞いております。
戦争中、いちいち飛行時間の管理は出来ないでしょうから当然の事でしょうが、戦後の航空事業再開の折には、戦前の飛行時間に関しては全て自己申告だったとか。
自己申告となれば、多めに申告するのが人の常。

by FD (2010-09-09 09:08) 

limelight

はじめまして。
「概ね降下開始地点となるMWE(東北VOR)の手前60マイルの地点である、PEONYポイント付近となる事が分かりました。
「よし行ける!こうなれば抜くしかない」 と言う訳で、マック.87での巡航を続け、降下開始までに前に出る事が出来たのでした。」
私は、以前747に乗っていて、今は767です。
気持は非常に分かりますが、
諸般の事情があるとはいえ、
先行機を抜くのであれば、その飛行機の迷惑にならないように、降下開始点あたりで、10数マイル前に行ける状態でないと(さらに言うとその前の先行機とのセパレーションも考えて…実際には難しいですが)やるべきではないと考えます。
もちろん、そのような事は機長として当然、お考えだと思いますが、
単にこのように書かれると、エアマンシップの観点からも疑問に思います。
素晴らしい内容のH.P.で、よく参考にさせて頂いておりますが、
あえて、申し上げました。
失礼をお許しください。


by limelight (2014-09-25 08:14) 

FD

記事本文にもありますように、先行する737を抜く地点は
『概ね降下開始地点となるMWE(東北VOR)の手前60マイルの
地点である、PEONYポイント付近となる事が分かりました』
となりますので、高速の-400が先行機を邪魔することはあり得ない
と考えての対処でした。

by FD (2014-09-25 16:46) 

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