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ILSのカテゴリー [航空関係]

古~い記事に興味ある、そして考えさせられるコメントが寄せられましたので、ゾンビよろしく蘇らせてみました。

CATⅠ・CATⅡ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・CATⅢ
これが私が考える、各 ILS カテゴリーの距離感でしょうか。
CATⅠ と CATⅡ は、かなり近い所にあるアプローチであると考えるのですが、CATⅢ 、それらとは全く別の場所にある、孤高のアプローチだと断言してもよいのではと思っております。

飛行機の事は、車に例えれば理解しやすいと思っているのですが、CATⅠ がサンデー・レースなら、CATⅡ は地方選手権。そして、CATⅢ はF1レースに相当する言っても過言ではないでしょう。

今、ある空港に ILS で着陸しようとしているとしましょう。
天候が悪化して視程が低下、CATⅠ から CATⅡ に進入方式が変更になったとします。
その場合、SSP(Special Safeguards and Procedures )が発令され、クリティカル・エリア内への車両などの立ち入りが厳しく制限されます。そして、オート・ランドが必須となります。
criticalarea.gif
でも、それだけの話なんですよね。進入復行高度が200フィートから100フィートまで低下するだけ。

ところが、更に視程が低下して、RVR 350m未満になったとしますと、いよいよ CATⅢ の出番となります。
CATⅡ までは、最終的には滑走路を視認し、間違いなく滑走路に着陸できる事を確認しながらのアプローチとなる訳ですが、CATⅢ は滑走路を視認しないままの着陸が可能となっているのです。
自動着陸装置の故障率が10億分の1と厳しく規定されている事が納得できると思います。


前回からの続き。
広島空港の ILS 10では、CATⅠ /CATⅢ を行う事ができるのに、CATⅡ を行う事ができない理由は?
コメント欄に書き込んで頂いた通り、CATⅡ では電波高度計の表示によって、進入復行を開始しますので、直下の地形の影響を大きく受ける事になるからなのです。CATⅠ は気圧高度計を使用しますので、直下の地形の影響を受ける事はありません。

まずは、熊本空港の地形を見てみましょう。上下方向の縮尺は横方向の5倍になっております。
blogkumamotocat3.gif
blogkumamotocat3photo.jpg
CATⅡ 、CATⅢ 共に、DH(AH) は100フィートに設定(赤線)するのが通常で、その直下の地形は、ほぼ平坦である必要があるのですが、熊本空港のように台地の上にある空港では、
平坦な面を確保するために大がかりな土木工事が必要となったのです。
そこで上図のように、ある程度の盛土を行って、最小限の平坦な地形を確保した上で、
更に DH(AH) を 75フィートに下げる事により、CATⅢ の運用を可能としているのです。
DH を100フィート付近に設定しますと、地形の急激な変化により、電波高度計の表示が大きく変動し、高度計の数値を認識する事が困難になる事がお分かり頂けると思います。

ただし、CATⅢ では滑走路を視認できない事による進入復行は想定していませんので、
DH 75フィートは CATⅢ を行うために必要な地上施設、搭載機器が正常に作動しているかどうかの最終確認を行う高さ、AH(Alert Height )としての運用を行っております。

しかし、CATⅡ の DH は100フィート未満に設定する事ができません。そこで電波高度計の表示が安定する手前の位置、DH 174フィートの所に CATⅡ の進入復行点を設定しています。

blogkumamotocat3minimatable.gif

TCH(Threshold Crossing Hight ):RDH [Reference Datum Hight]とも言いますが、ILS グライド・スロープの電波の中心が、滑走路末端を通過する時の末端標高からの高さ。

RA(Radio Altitude ): 電波高度計の表示。直下の地面・水面からの垂直距離を表す。

DH(Decision Height ): 決心高。滑走路を視認できなかった場合、進入復行を開始する滑走路末端標高からの高さ。

IM(Inner Maker ):ILS アプローチにおいて、滑走路末端からの距離を知らせるため、上空へ向け電波を発射する装置。滑走路から近い順に、IM-MM(Middle Maker )-OM(Outer Maker )が設置されるのが通常だが、現在は DME で代用するのが主流。
また、DH の位置と必ずしも一致いている訳でもないので、無用の長物か?

そしていよいよ本題の広島空港の話ですが、

bloghiroshimacat3.gif

この地形では盛土で平坦な面を造る事は不可能でしょうから、鉄板の舞台を造る事で、平坦な面を確保しているのです。
CATⅡ の設定を諦めた事にも納得がいきますね。

興味あるコメントとは、成田と釧路空港の離陸のための最低気象条件の微妙な違いだったのです。
3.gif
* APPLICABLE WHEN SPP IN FORCE の適用について。

ところで、会社の資料などで、こんな図面を見かけます。
blogslantvisi.gif
RA 100フィートに達した時、視界が350mならこの範囲まで見えるはずと、赤線で示したような斜距離を表す図面なのですが、ちょっとおかしいと思いますね。
グライド・スロープ上、RA 100フィートの位置にパイロットの目がある訳ではありませんので。
電波高度計が100フィートを表示した時の機体の位置は図のようになりますので、パイロットから見た実際の斜距離は緑線のようになるはずです。重箱の隅をつつくような話ではありますが。

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